▼遠野の月

□八話
1ページ/5ページ

淡島に呼ばれて李啓は実戦場に来た。
そこには仕事の土彦以外皆揃っていた。


「ってことで、特訓しようぜ!」

『唐突だなおい』


まあ、ここに来たらそれしかないとも考えられるが。


「だってよォ…お前さ、一昨日一人で行っちまったじゃねえか!
 俺たちもいたのに!!」

『いや、それは悪かったって』

「それにすごい殺気だったわよ…」

「怖かった、けほ」

『あ、あはは』


苦笑いする李啓。
イタクは何の話かわからず雨造に声をかけた。


「一昨日イタク連れてかれたじゃん?
 そしたら李啓が血相変えてさー
 しかも見たことないくらい怖い顔してすげー殺気出してて誰も動けなかったんだよ」

「李啓が…殺気?」


あの作り笑いが多い男が?と疑問に思うが
人間たちに見せた李啓の妖気を思い出して納得する。


「だァから!
 俺も強くなるべく李啓と実戦して学ぼうと思ったんだ!」

『ただ俺と戦いたいだけだろ』

「おう!」


ため息をつく。


『まあ、良いか』

「よっし!」

『じゃあ、淡島』


淡島が首をかしげて李啓を見た。
ふわりと桜の花びらが舞う。


『まずは、この俺の畏れを断ち切ってみろ』

「!…上等だあ!!」


ダンッと地面を蹴って淡島は李啓に斬りかかる。
が、そこには桜の花びら。
淡島の数歩後ろに李啓は立っていた。


『どうした?またかわされてるぜ?』

「〜もう仕掛けはわかってんだよ…」


グッと刀を握る手に力が入った。
それを見逃さず李啓はそっと刀に手を添える。


「鬼神の鬼憑―伊弉諾」


―刀、じゃねえな…アレは錫杖か?


ブンッと振り回せば強風が李啓を襲う。
桜の花びらが風と共に消えた。

そこに残るのは李啓ただひとり。


『お見事』


ニコリと笑って李啓はパチンッと指を鳴らした。
それにきょとんとしたあとハッとする。


「ちょっと待て!」

『戦場で待ったなし。
 土麗降臨―龍泥―』

「んぎゃ!」


淡島KO
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ