▼遠野の月

□二話
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やってきたのは森の中にある大木を切り落としたような場所。
遠野の里で生み出された対妖怪用戦闘術の実戦場だ。

その実戦場に淡島と李啓が向かい合っていた。
周りには冷麗、紫、雨造、そして経立の土彦。
4人が見守っていた。


「ルールは簡単。
 お互いの鬼發でビビったほうが負け。
 それでも勝負がつかなかったら鬼憑で戦って場外に出すか倒したら勝ち…でいいわね?」

「おう!!」

『了解した』


淡島が刀に手を添える。


「では、始め!!」


冷麗の言葉と同時に淡島が畏れを発動させる。
千手観音のようなものを後ろに纏い、天女のように淡島がその場に舞った。

李啓は微動駄にせずじっと淡島を見つめていた。
その行動に全員が疑問を抱く。


「お前発動させねえのか?」

『ん?鬼發か?』

「おう、まさか持ってないとか言わねえよな…」

『まっさか〜』


ヘラリと笑って淡島を見つめた。


『もうやってるぜ?』

「「「「「え?」」」」」


そこでようやく気づいた。
ひらりと桜の花びらが淡島の目の前を風に乗って踊る。


「桜の花びら…?」

「は?まだ桜の季節じゃ…」

「まさか!」


冷麗の額に花びらが当たると水が頬を伝う。


「あら?」

「これが李啓の鬼發…ケホ」

「これまた綺麗だなー!」


ギャババと笑う雨造。
それに釣られて淡島もニヤリと笑った。


「お前の鬼發見切った!!」

『ほう』

「今ので理解したぜ!
 お前の鬼發は幻覚!!水を桜の形にして舞ってるんだな!」

『半分正解、半分残念…だな』

「なにぃ!?」


ザッと刀を構える。
李啓はただ腕を組んで仁王立ちをしていた。


「じゃあ、鬼憑いくぜ!!
 これならどう―――」

『土麗降臨―龍泥―』

「え」

「「「「!!?」」」」


どしゃっと鈍い音が森に響いた。
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