◇◆◇another story◇◆◇
□sideK
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本編4P〜5P前半の慶喜さん目線です
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文久三年、水無月。
後、十日程で秋だというのに、まだまだ暑い日の昼下がり。
屋敷の者に引き留められながら京の町に出るのも、まるで日課の様になっている。
(悪いと思わなくもないけど、ずっとじっとしているのは性に合わないんだよね…)
といっても、秋斉の所くらいしか行こうと思う場所もない。
今日も「またあんさんはふらふらして…」とか、小言を言われるのだろうか。
(でも、屋敷に閉じ込められるより辛い事はないか…)
少し寄り道をしながら置屋に向かう。
すると、前方に人だかりがあるのに気付く。
何か捕物でも有ったのだろうか?
暫くすると人だかりが後込みするかの様に道を空け、そこをこの空と同じ色の羽織の集団が歩いて来る。
(全く…。まだ京に来て三ヵ月程度なのにこんなに恐れられるなんて…)
集団の中程を覗いてみると、隊士に捕まっていたのは二人の女の子。
そのうちの一人が一瞬、こちらを見た様な気もしたけれど、そんな事より驚いたのが先だった。
そっくりだったんだ…。それも、あの吉野に…。
『うち──れたら、…て下さい。そして──らず助けて、と。──が来たら、伝えて…』
(吉野、やっと半分わかったよ…)
あの時の約束、果たしに行こうか。
吉野と、吉野にそっくりな娘の為に──