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□甘党への変更
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ほらいわんこっちゃねぇ。
俺の言ったとおりだろ?
ちっせえ体はよりちいさく縮まった。

原因はコラソンだ。

餓鬼は嫌いらしい俺の弟は手塩にかけて育てている俺の女が鬱陶しいらしく甲斐甲斐しく世話を焼こうとするナマエを悉く追い払った。
ドジを踏んでいつも大惨事になるコラソンをまだ10代前半のあいつはめげずに気にかけている。
今日はどうやらライターの火が服に燃え移ったらしい。
ゴォオオといつもより燃えているそれに焦ってナマエは手を出した。
火傷をする前に鎮静化したらしくコラソンは痛まない自分の体を見た後にナマエの手を心配した。
珍しく。
どうやら水が無かったので必死に手で消そうとしてたらしく手が真っ赤になっている。
すぐに手当てに向かおうとすればコラソンが腕を掴んで近くの水に問答無用で突っ込んでた。

「こ、こらそんさん。ごめんなさい」

すっかり落ち込んでいるナマエにコラソンのみせた紙に書かれていた文字は生憎こちらからは見えない。
ただ、嬉しそうにしているナマエを見る限り礼でも書かれていたのだろう。
まったく人騒がせな恋人と弟だ。
見ていて飽きない。
コラソンが呼んだらしい医者に手当てされてすっかり笑顔が戻ったナマエを尚も観察していると不意に目があった。
くりくりとした大きな目がより大きくなった後にスッと細まって幸せそうな顔を晒しやがった。
ああ、その顔そそられる。
舌なめずりした俺に気づくことなくコラソンに話しかける恋人の元へ向かうべく俺は席を立った。


その日からナマエは見るからにコラソンを構うようになった。
何かするごとにコラソンにも一緒にやろうと誘う。
ついには俺たちふたりっきりのデートにまで呼んだときには流石にため息をついたが、コラソンもナマエも何もやましい気持ちもなく寧ろ仲良さ気にしていたから俺は我慢したのさ。
そりゃあ弟と最愛の恋人が仲良くしてたら嬉しい。

「ドフィ!みてみてコラソンとお揃い」

やけに可愛らしいデザインのブレスレットにコラソンはあからさまに顔を歪める。
確かにこりゃあ抵抗もあるな。

(女物は嫌だ)
「えー可愛いのに」

むっすりと音が付きそうなほど膨れたナマエは年相応というより、もう10代にすら見えなくなるから不思議だ。
頬を抓る。

「しゃーねえ、俺もつけてやる」
「やっひゃー!」

口角を上げて喜ぶ姿にコラソンも渋々了承したらしい。
かわいいデザインのそれを手に取って眉間にしわを寄せた。

「フッフッフ、いいじゃねぇか。ロシー」
(もう女物はなしだ)
「おっけー!大丈夫。わたしこれ大事にするね」

本当に大事そうに早速つけるナマエに絆された俺たち兄弟は顔を見合わせてそれからふっと笑った。
いつの間にかこいつ中心にわだかまりなんて消えてしまえばいいと心底思う。








(ドフィにチュー)
(おいおい、どうした)
(だいすきだから!)
(そうか)
(コラソンにもチュー)
(フッフッフ)
((と、とめさせろ!))

2015.02.22

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