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□無我夢中
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私の好きな人はいちばん強くて、かっこいい平和の象徴だ。
金色の髪の毛がぴーんとたって筋肉もりもり。
誰にも負けない純粋な強さを持った人。
そんな説明をするだけで皆「えーっ」と、声をあげる(全くもって失礼だ)。
どうやったってオールマイトは私の一番なんだと言うとかっちゃんはふて腐れた顔をした。
隣にいる出久くんは顔を赤くした後に青くして、考え込んでいる。
そんなに可笑しいことだろうか。
いちばんかっこいいひとを好きになるのは普通じゃないことだろうか。

「だって君、轟くんから告白されてたよね。付き合ってるんじゃないの?」
「違うよ。彼が私を愛してるだけで私はただ彼が友達として好きなだけ。両想いじゃない」

きっぱりと言い放つと近くにいた轟君があからさまにがっくりしている。
でもはっきり言わないと君に対して申し訳ないと思うし、何よりごたごたするのは絶対いやだ。
オールマイト先生に誤解されるのも嫌だからこれが最善だ。

「さっすが美人はやることがちげぇな。轟より上を落とそうなんて」

電気くんがそんなことを言うけれど何やら皆は誤解しているようだ。

「私、別にオールマイト先生と恋したいわけじゃないよ」
「ええ!?」
「お前、ますます意味わかんねぇ」

かっちゃんがむすっと唇をつきだすから思わずつまみたくなった。
その唇は素直にわたしより可愛いと思う。
話がずれたけど、私はオールマイト先生が好きだ。
でもオールマイト先生はきっと私を生徒としか見れないから恋人になんて一生かかったってなれない。
だって平和の象徴と呼ばれるくらい強いし、みんなに好かれるし、かっこいいし、かっこいいし。

「そんなわけで一生片想いして独身する」
「勿体ないわ、ナマエちゃん。あなたみたいな可愛い子素敵な男性と結婚するべきだわ」

梅雨ちゃんがせまってきたけど私の考えは全く変わらない。
オールマイト以外の男と結婚するくらいなら舌を噛み切って死ぬか、相手を殺して刑務所に入るなんて物騒な考えを持ってしまう。

「わたし応援するよ!」
「ありがとうお茶子ちゃん、付き合う可能性は全くないけど」

そんなこんなで放課後を過ごした。
皆が下校していく中ひとり教室に残る。
こうやって残っていればきっと先生がくる。
今日はオールマイト先生がいいなと窓の外を見ながら1時間くらい待ち続けた。
夕焼けがすっかり消えてしまって教室が真っ暗になって私は堪らず机に突っ伏す。
もうそろそろ帰ろうか。
課題もあることだし、席を立ってみて気づいた。
針は7時を指している。
案外ずっと誰にも気づかれずに居座っていたようで足早に教室を去る。
廊下を歩いていると前方から凄く会いたかった人が現れた。
なんて言ってみるけど実際は相澤先生で落ち込む。

「まだ残ってたのか、相変わらずだな」
「すみません愛ゆえに暴走しがちな高校生なので」
「早く帰れ」

冷たい言葉にも屈せずに相澤先生に礼をして横を通る。
こんな日がいつもだと全く滅入ってしまう。
オールマイト先生の授業以外つまらないのに(嘘、本当は13号先生の授業とかものすごく好き)。

「そうだ、そこをまっすぐ行けばいるぞ」
「!」
「会ったらすぐ帰れよ」
「了解です。大好きです先生」

言う相手間違えてるだろと凄く冷たい目で見られた。
でもいいんだここの先生は皆好きなんだから。
特にオールマイト先生が大好きすぎて可笑しいだけで。

「やあ、まだ残ってたのかい?」

むきむきで素敵な笑顔のオールマイト先生に私は目を奪われた。
保健室から出てきた先生。
やっぱりいつもと同じでかっこいいからずるいので是非とも結婚してほしい。
心の声が漏れる前に「先生に会いに来ちゃいました」と、かわいこぶってみる。
先生は愉快そうに笑って私の頭をぽんぽんと。
あ、ぽんぽんされた。
顔を真っ赤にして固まる私を余所に先生はやっぱり愉快そうに笑って額にキスをしてくれる。

「君はそうやって私を夢中にさせるのだからたちが悪いよ」
「先生が好きなんだからしょうがない。皆には私の片想いなんだって言ってるんだからお相子でしょう」

先生をかがませてお返しに額にくちびるを触れさせれば先生はいつもよりデレっとした顔で私を見た。
相変らず私に夢中なひとだなと幸せいっぱいになりながら思う。
どうせならこのまま先生の家にいくのもいいかもしれない。
どうせ先生の家には私の使うコップや歯ブラシ、下着や私服だってあるんだからいいでしょ、ね。
先生に甘えて言えば仕方がないともいいよとも言わずに手を繋がれた。
あ、これお持ち帰りされる。
スクールバックを先生に持っていかれて私はやっぱりオールマイト先生が近くにいないと呼吸さえも上手くできないんだと思った。


あとね、先生。
前方にどうやらまだ残ってた電気くんと実くんがいるんだけどなんていいわけしよっか。
先生は一向に手を離さず慌てたけど私は嬉しかった。
先生、いけないのって悪いこと?







2015.06.14

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