INFINITY ABILITY

□第壱章
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目が醒めると、其処は研究室のような実験室のような、何処か現実離れした空間だった。
寝転がっていた床から身体を起こし、梨絵は辺りを見渡す。
そして、まだ床に転がっている比奈と其の寝顔を無音カメラで撮影する莉央、部屋に並んだ機械類を物珍しそうに観察している涼香と波瑠を見つけて、思わず深い溜息を吐いた。

波「あ、梨絵、おはよ」
梨「おはよう?」
涼「疑問符付けたの何で?」
梨「いや、朝か分からないし」
波「そんなのどうだっていいよ。問題はココが天国か地獄か、あるいはまだ生きてるか、分からないって事だよ」
梨「天国か地獄か……って波瑠も死んだの⁉︎」
波「おう!ホームから誰かに突き落とされて電車に衝t」
梨「分かったからそれ以上言わないで」
涼「え?想像しちゃったの?」
梨「少し……私は電車の中で男にお腹刺された」
莉「私達は車に追突された。壁にぶち当たって押し潰された……と思う」
梨「ふーん、二人一緒に死んだんだ。涼香は?」
涼「私は死んだかよく分かんないんだよね〜。立ち上がったらフラってなって意識落ちて気付いたら此処」

まあ、死んだって事なんだろうね。

自嘲気味の笑みを浮かべて涼香が言う。

莉「梨絵が“死んだ”のは何時何分?」
梨「えーと、最後の乗り換えの前で時計見たから覚えてるよ。確か7時50分」
波「ビンゴ」
梨「へ?」
涼「死亡時刻はみんな7時50分か……梨絵は死んだ状況そのものがイレギュラーだしね」
梨「みんな7時50分に“死んだ”の?確かに電車内で駅に着く直前に私だけを刺すのはイレギュラーだけど、みんなもそうなの?」
波「まあそうだな。俺をハネた電車は遅れてるはずだったんだけど時間通り来たし、更には俺をハネる直前に加速した。涼香の場合は本読んでたら皆がいなくなってて立ち上がったらコテッ、莉央と比奈は一方通行のT字路のこっち(|)を逆走してきた一般乗用車にバーン」

いつも通り身体を使って説明する波瑠。

梨「確かにおかしな点は多いね。この状況こそイレギュラーだし」
波「うん。脱走はムリ!だって涼香があそこの通風孔から出るのはムリだって言うし」

と波瑠が指差したのは床から1.8m位にある人一人がギリギリ潜れるくらいの通風孔。

梨「うん。流石に無理だと思うよ」
波「アレぐらいいけるでしょ」
莉「無理。まず、あの蓋が外れない。其れに、誰が比奈起こすの?」
波「うっ……」

比奈の寝起きの悪さは一級品なのである。

莉「更に、途中で行き止まりだったり通れなかったりするかもしれないでしょ?無理だよ」
波「はあ……やっぱそうか……せめてドアがどこにあるかわかればいいのに」
梨「涼香、ハッキングは……」
涼「出来てりゃとっくにやってる」
梨「ですよね」

二回目になる溜息を梨絵が吐きかけた時。
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