廻る曇天
□廻る曇天
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「さぁてと、俺も行きますかね」
「今日からか…。あいつが空丸の学校に通うのは…」
白子の口調には空丸を案じるような、不安を臭わせている。
「大丈夫だって。そのために俺がいるんだからな」
それに、と天火は続ける。
「万が一の時には、お前らや曇天の神がついてるからな」
そう言って天火は、眩しいほどの笑顔を浮かべる。雲などには遠い、太陽のような眩しい笑みを。
***
なんとかギリギリで学校へたどり着く。
空丸と宙太郎の通う〈犲学院〉は、初等部から大学まで全て揃っている一貫校だった。
二人で息を切らしながら、それぞれの校舎へ向かう。
教室に行くと、なんとかHRには間に合ったようだ。席についてすぐ、担任が入ってくる。
「今日は転校生を紹介するぞー」
途端に教室が騒がしくなる。転校生が来るには、少々珍しい時期ではあるが色々事情があるのだろう。
「八岐おろち君だ。仲良くするよーに」
〈おろち…オロチ…?〉
どうでもいいと言わんばかりに、知らぬふりを決め込んでいたのだが、転校生の名前を聞いた途端、背筋に悪寒が走る。朝と同じ、言い表せぬ恐怖感。震えだす身体を思わず抱きしめる。恐る恐る、転校生の方を見てみる。
「……」
普通の人間だ。いや、当たり前だ。何を自分は怖がっているというのか。
そう言い聞かせるのに、不安感も恐怖感も拭えない。
ふと、転校生と目が合う。
向こうもこちらに気づいたようで、人の良さそうな笑顔を浮かべる。
転校生、八岐おろちの席は空丸の前の席。
『オロチは人の敵にて害。見付け次第排除すべし―ー』
そんな言葉が頭の中で響く。
「……オロチは…兄貴の仇…、」
まるでうわ言のように小さくもらす。人々の禍の元であり、排除されるべき、忌むべき存在。
「…ッ」
不意に激しい頭痛とともに、現実に引き戻される。途中まで不自然に伸ばされた腕。このまま自分は何をするつもりだったのか。目の前の転校生の首でも絞めるつもりだったのだろうか。
〈恐い…〉
自分が自分でなくなるような。
声にならない声を上げそうになって、それをなんとか飲み込むと教室から飛び出して、トイレへ駆け込む。
「…はぁ…はぁ…っ」
「……大丈夫?」
一頻り戻して落ち着いた頃、心配そうに声をかけてきたのは、あろう事か八岐おろちだった。
「……あぁ」
まだ胸のあたりに、若干の不愉快さは残るが、それを押し込めて改めて八岐おろちに視線を向ける。
透き通るような肌の白さ。
雲家の居候である、白子の肌も白いが、八岐はそれよりも白い。体型はスラリとしていて、女子たちが騒ぎ出しそうな、所謂イケメン男子。首元や、腕には蛇をあしらったアクセサリー。
名前が〈八岐おろち〉だからなのだろうか。だとしたら、相当のナルシストだと思う。
改めて見てみると、先ほどのような恐怖感は襲ってこない。