遥かなる時空の中で

□遥か、君へ (千尋×忍人)
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暗い世界

目を閉じてるのか、開いてるのかすらわからぬ。
―闇が広がる世界(ところ)

玉が光を放つ

「忍人、神子を救って…」

遠夜の声で、世界が光に包まれる

「ここは……」

身を起こすと、そこは見覚えのある河原。

「!破魂刀がない……」
破魂刀が無いこと以外には、特に変わったことはない。

(こうしても仕方ない。宮に戻るか)

日が沈むまでには宮につくと計算し、街道を進む。
民家が目につきはじめた頃、前方に人だかりができていた。

「ほら、もうすぐよ」
「早く来ないかなぁ」
(………)

人々は嬉々として、何かを待っていた。
何を待っているのか尋ねようとしたとき、歓声があがる

「きたぞ!くなの軍だ!」
「大将も一緒だぞ」

(っ…!!!)

忍人は刮目し、くなの部隊を。。。
彼らを先導する将軍を凝視する

「足往将軍ー!!」
「すげぇ!みな強そうだなぁ」

屈強なくなの部隊を率いているのは、足往の面影がある凛とした青年。

(違う。俺の知ってる足往ではない)

確かに最近の足往は、背も伸び心身共に歳相応に成長してきた。
が、目の前の足往という将は、明らかに年齢も将としての歴も積んでいる。

「そこの貴方」
「!」

足往という将は、忍人の前にくる。

「失礼。貴方の匂いがとても懐かしく感じたので。もしや、葛城の族の方ですか?」
「確かに。葛城の族<うから>だが。俺も問いたい。君は足往‥将軍なのか?」
「確かに足往とは私のことです。葛城の族の方。よければ私と共に宮にいかがですか?」

聞き慣れない低い声の足往。
だが、彼の眼は真っ直ぐ、落ち着いた表情でいる。


(‥‥断る理由もない。今は情報が欲しい)

忍人は足往の申し出を受け、宮に戻った。


いつもと見慣れた宮内だが、空気が張りつめてる。

「あ、足往。戻ったのですね」
「風早殿。只今もどりました」
(!風早)

足往の後ろにいる忍人を見て、風早が一瞬言葉に詰まる

「‥‥驚きました。いや、失礼。あまりに忍人に瓜二つなので。。申し訳ない」
「‥いえ。お気になさらず。私はそんなに似ておいでですか?」
あえて風早に話を合わせてみる。

この宮はおかしい。

―少なくてもここは‥

「ええ。本当にそっくりですよ。でもそんなはずありません。忍人は‥‥」
「風早。足往が戻ったのと報告受けたけど。」
「千尋!いや陛下。お待ちを!今は‥」

狼狽える風早の後ろから、千尋が顔を出す。

「えっ‥‥」
「っ!!」

千尋と目が合う

「‥忍人さん??」
「‥‥‥」

千尋の瞳が熱く

動悸が速くなる

「!いや!!だって忍人さんは!忍人さんはーーー!!!」

「千尋!!落ち着いて。彼は葛城の族だが、忍人ではありません!!」

突然泣き叫ぶ千尋を懸命に宥める風早。

「忍人さん!!忍人さぁぁん‥‥」
「千尋‥‥大丈夫ですから。大丈夫」
「葛城の方、こちらへ」

風早が千尋を優しく抱きしめる。

泣きじゃくる子供をあやすように。

冷静な足往に促され、忍人はその場を後にした。

「驚かせてしまいすみません」
「いや。それより陛下はいかがなされた」
廊下を歩きながら、なるべく平静を取り繕う忍人。

(君はあんな顔して泣くのか‥)

「貴方が忍人様に瓜二つだからか。今回は特に激しいですよ。会わすつもりではありませんでしたし‥

足往の言葉に違和感を覚えるも、足往は言葉を続ける
「毎年、初夏になると葛城の族の方が挨拶に参られます。そうすると決まって‥‥ほら」

足往の言葉を遮るように稲光がはしり、轟音が轟く。

「陛下が龍神の神子と云われて随分たちます。陛下の御心に引き寄せられ荒天しやすいのです」
「そうですか。‥これでは‥‥」

忍人の顔つきが厳しくなる。

(荒天が続けば実りは減り、民の暮らしは‥)

足往が足を止めた。
そこは、王族のみが入れるはずの小さな中庭。

「葛城の方どうぞ。こちらが」

青々と覆いしげる桜の木。
その下に、突き刺された二本の刀

「葛城将軍の墓標です」

忍人は息を呑み込んだ
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