Fate/Zero -EXTRA-
□EXTRA 09
1ページ/5ページ
フェンサーからギルの伝言を言付かった私は、神父様たちに断りを入れて、アインツベルン城へ向かった。
勿論最初は反対を暗示することを言われていたが、こちらも通る理屈を用いてそれに応え、最終的には義兄が口添えしてくれたおかげで、何とか納得してもらえた。
『入るの躊躇うな……。えっと、入口は……』
いきなり腕を掴まれ、ずるずると引きずられる。こんなことをするのはギルしかいない。
為されるがまま、ギルについていく(連れて行かれる)と、入口らしきところに到着した。
「我は先に行き、貴様を誘ったというが、あくまでも他人という前提だ。我と口裏を合わせろ、良いな?」
静かに頷きつつ、フェンサーに目をやれば、了承しているようだった。
ギルは確認すると去り、私は端末を取り出した。遠見の水晶玉で、サーヴァントの位置を頼りに足を運ぶ。
するととうに3騎のサーヴァントが集合していた。
「遅いぞ雑種。この我を待たせるか」
『自分から読んでおいて、酷い言いぐさ』
「思い上がるなよ?だがしかし、今宵の我は寛大だ。その不敬、許してやろう」
『許されなくても結構です。私、参加者じゃないし』
「おいおい、嬢ちゃんも金ぴかも、痴話喧嘩は余所でやってくれぬか。酒が不味くなるわい」
「何が痴話喧嘩か。奏者の恋人は余である。前提から間違えておるぞ」
『やめてフェンサー。余計ややこしくなる』
私たちはギルとセイバーの間、ライダーと対面する形でその場に座した。
ひとまず、私たちのことを説明しなければ、身の危険にしかならない。
『私は岸波白野。キャスター討伐において、聖堂教会より派遣されたサモナーです。
こちらは、私のファミリアのひとり』
「今はフェンサーと名乗っておる。その金ぴかに呼ばれてな。
王が集まると聞いたから、今宵はこうして来たというわけだ」
『彼女は言うなれば薔薇王です。外見こそセイバーにそっくりですが、別人なので理解してください。
あと形式として、真名は伏せます』
「……こういうことも、あるのですね」
「確かにまあ、面(オモテ)だけなら似ておるが、雰囲気は金ぴかだろう」
驚きを内包した声を発したセイバーと、的を射た表現のライダー。
フェンサーは解りやすくライダーに食って掛かったため、私は避難してセイバーに話しかけた。
『あの、舞弥さんは、大丈夫でしたか?』
「はい。貴女の応急処置のおかげで一命を取り留め、その後アイリスフィールの治療で回復しています」
『良かった……』
「貴女は、優しいのですね」
「それが奏者の美徳よ。余のマスターは、心配になるほどのお人好しでな」
『……否定できない』
「雑種」
ギルに呼びかけられ、俯いていた顔を持ち上げ、そちらを見やる。すると、ぽーんと何かを投げ渡された。
慌てて受け取ると、ぶどうの缶ジュースだった。
お酒を飲めない私のことを考慮しつつ、雰囲気に合わせた、ということだろう。
これがいくらするのか考えると怖い。缶だからと侮るなかれ。王様なら横暴を通すことくらい容易。
高いジュースを高い素材で……というか金で作った缶に入れたのかもしれない。
さっさと器にジュースをよそい、缶を後ろに置いた。視界にも入れたくない。