Fate/Zero -EXTRA-

□EXTRA 06
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神父様に起こされた時、太陽はもうすぐ最高点に達すると言うところまで来ていた。
聖杯戦争中は学校に行けない(いつ巻き込まれるかも解らない)ため、こうして不規則な生活を送ることが増えている。

『それで、神父様。わざわざ私を起こしに来るということは、何か大事があったんですか?』

子供だが女性の部屋ということもあり、神父様は私の部屋に滅多に立ち入らない。
用件があっても、扉の前で済ませてしまう。最近なら、ファミリアを仲介することも多い。
何かあったと考えて妥当だろう。

「簡潔に述べるとな。冬木の連続誘拐事件の犯人が、キャスター陣営だということが解ったのだ」

『!?それは……』

マスター、魔術師以前に、人として論外だ。
人並みにそう思うと同時に、私のキャスターであればそんなことはしない。
私自身が、聖杯戦争に関与する理由が無くなった。

「お前も魔術師として最低限を学んだのなら解るな?魔術は秘匿せねばならない。
そこで私は、全てのマスターに対し、キャスター討伐に向かうよう、監督権限でルール変更をするつもりだ」

『それはまあ、当然の対応だとは思いますけど……、それと私に、どんな関連が…?』

「……今は、使える戦力は使いたい。
お前には、聖堂教会から派遣された魔術師として、キャスター討伐に協力してほしいのだ」

『……私は別にいいんですけど、私の身だけではなく、色々と危険が付き物になりませんか?』

私の存在が露見すると危険だ、ということは、ファミリアにもギルにも、義兄にも言われてきたことだ。
私だけの問題ではなく、匿っていたことに対する追及が無いとも限らない。いや、追求で済めばまだ良い。
弁明も何もなしに、殺される可能性がある。義兄も監督役の神父様も。
演算機能で視れば、きっとその結末が、無数の選択肢の中に半分はあるだろう。

「そうならないよう、私も策を用意して、お前に言っているのだ。私とて、覚悟はしている」

『……それなら、神父様は私に質問していませんよ。外殻こそ質問なだけの、決定事項じゃないですか』

人の好い笑顔のまま、神父様は私の頭を撫でた。


神父様は礼拝堂で、招集をかけた各陣営の使い魔を確認すると、今回の招集の旨であるキャスター討伐について、語り始めた。私は精神と肉体を分離し、精神体で、こちらの話を聞いている。
最初からこの場にいるには不可解であるが、だからと言って外で待つのも危険であるし、使い魔にばれる可能性もある。
私の紹介になった時、肉体をこちらに持ってくるとともに、即時統合させることで、実力のある魔術師と見せかけて牽制しようと言う目論見である。
実際そんな芸当ができると言うことが凄いと言うが、元々サイバーゴーストな私とこういう魔術は相性が良い。
ムーンセルのアシストもある。魔力の消耗が激しいだけだ。

「――キャスターの消滅が確認された時点で、改めて聖杯戦争を、再開するものとする。
そして、此度の緊急事態において、聖堂教会より派遣された魔術師を紹介しておこう。どうぞ、入りなさい」

その言葉を合図に、肉体を呼び寄せ、意識を融合させる。現実とのタイムラグは、およそ2秒。

『岸波白野です。キャスター討伐限定で、冬木の聖杯戦争に参加させていただきます。どうぞ宜しく』

「彼女は、魔術師としては稀有な才能の持ち主で、部類としては召喚術士(サモナー)にあたる。
使い魔が一級品なのだが、それはおいおい、自らの目で確認してもらおう。
さて、質問がある者は今、この場で申し出るがいい。尤も、人語を発音できる者のみに限らせてもらうがね」

一斉に使い魔たちが飛び立った。

「……やれやれ、頭の痛むことばかりだ。白野、お前も疲れただろう?すまなかったね。暫く休みなさい」

『いえ、このまま休むと、また生活リズムが狂ってしまいそうなので、外出してきます』

「……」

『心配しなくても大丈夫ですよ。寧ろ戦力を増やすので、大船に乗った気持ちでいてください』

私の魂胆を知るのは、私とムーンセルのみ。さあ……狂った夜の幕開けだ。
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