Fate/Zero -EXTRA-
□EXTRA 04
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ライダーはバトラーの宣言通り、真名を語った。征服王イスカンダル。
学校知識でいうなら、アレキサンダー大王である。ともあれ真名を公開するとは何事だろうか。
マスターである少年は不満を口にし……べちんと一発くらった。
『わ、あー……』
「あれはあれで大変よな」
「はあ……」
冬木の聖杯戦争は、幾度となく低レベルであることを感じさせられる。それはもう、つくづく、しみじみと。
端末の情報がまた埋まり始めた。
『何だか……あっちでの聖杯戦争が馬鹿みたいに思える……』
「同意したくはないが、確かに」
「私とてアーチャーだが剣を扱っていたというのに」
苦労人なバトラーは私の予想以上に精神ダメージがあったらしい。ご愁傷様だ。だがまだ死なないでほしい。
「今一瞬、勝手に殺されたような気がしたんだが」
気のせいだ(笑)さて、中断こそしている戦場では、未だ真名やら宝具名が飛び交う。
おまけに罵り合い的なものまで始まった。子供かよ。
「奏者!口に出ておるぞ。抑えるのだ!」
「率直なのは良いことだが、君は女性だ。このままだとただでさえ逞しいというのに、より磨きが――」
『喧しい』
都合良くあった椅子で殴る。小言煩いぞ、このオカン。
自分が普通に比べて女性らしくはないことくらい、気付きたくなくても気付いている。いちいち言うな。
ほんと、この世全ての悪なんだろう、この野郎。
「い、椅子で殴るな椅子で」
「いくらマスターと言えど、今の奏者は聖杯と繋がってLv99の制限ギリギリだ。物理ダメージは相応だろう」
「おいこら!他にもいるだろうが!闇に紛れて覗き見しておる奴が!」
急に声が大きくなり(とはいえ先程から大きかったが)、内容的に図星であったのもあり、思わずビクッとなった。
フェンサーは警戒して剣を構え、バトラーも私を制しつつ投影準備をしている。
私も端末から礼装・遠見の水晶玉と聖者のモノクルを取り出し、索敵とステータス透視を開始した。
『!?嘘、殆ど全てのサーヴァントが集まってる』
「真か奏者!」
『あそこの3騎とアインツベルンにライダーのマスター。
アサシンがそれをどこかから見てて、ランサーのマスター……と、よく解らない反応……銃器、かな?それが2つ。
魔力の塊は……うん、たぶんギルかな。更に少し離れると、マスターっぽい反応がある』
「時臣と神父は篭っているだろう。そのマスター、恐らくバーサーカーのマスターだ。
銃器に関しては気になるが……」
「いずれにせよ、今出るのは得策ではないな。何があっても、様子見を……マスター。端末が反応している」
バトラーに示されて、慌てて端末を確認すると、まさかの着信。恐る恐る電話に出た。
『……もしもし』
〈白野。貴様は出るな〉
突如聞こえたギルの声に若干驚きつつ、問い返した。
『え……?』
〈何を間抜けな声を出しておる。当然であろう。貴様のような異例の存在が出てみろ。
どの勢力からしても目障りだ。……今は時臣の方針に従うフリをしておけ〉
そのまま一方的に通信を切られ、現界したギルをこの肉眼で確認した。
『……今の間に何があったの』
「ライダーが、隠れている者は臆病者だの腰抜けだの言ってな。終いには侮蔑すると言いおったのだ」
「それで、先程まで君と話していた英雄王は、抑えきれずに戦場に出た、というわけだ」
自分に出るなと言っておきながら、あの金ぴかは挑発に乗ったらしい。……大丈夫なのだろうか。
実力の心配はしていない。マスターは優秀なんだろうし。
これから遠坂時臣の計画は潰れるだろう、ということだ。まあそれも私には関係ない。
観測せざるを得ないだけで、勝敗がどうなろうと、私には意味が無いのだから。それにしても……。
「――この面貌を見知らぬと申すならば、そんな蒙昧は生かしておく価値すら無い」
ギルガニズム自重すべきだ、王様。ここにも低レベルがいたのか。