Fate/Zero -EXTRA-
□EXTRA 02
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あの一件の後、私は遠坂時臣に引き合わされた。正直に言えば、協力するつもりは無い。
聖杯を使って願いを叶えようとするのに異論はないのだが、そのために他人を蔑ろにし過ぎるのは頂けない。
魔術師はそういうものだと理解している。しかし、度を超えれば人間性の欠落を謳うに他ならない。
そんなの、つまらない人間だ。
「だが、サーヴァント級の英霊を、使い魔として召喚するとは、君の潜在能力は興味深い」
「そこまでにせよ、時臣。これ以上奏者を見世物にするくらいなら、余は貴様を斬る。言ったはずだ。
余と奏者は魂で結ばれておる。そこらの人間に理解されるほど、簡単な関係ではないわ」
「失礼しました、薔薇王よ」
セイバーの真名は公開していない。
だが何も公開しなければ、セイバーとギルには王やら暴君などといった共通項があるため、紛らわしくなる。
だから薔薇王、とだけ紹介をした。
『……』
「む?奏者よ、どうかしたのか?先程からずっと黙っておるようだが」
残念ながら、本当にまずい。先程までは思考能力まではあったが、今ではそれすら困難である。
これが魔術師(メイガス)の、魔力の枯渇なのだろう。
私はそもそも魔術師(ウィザード)であるため、純粋な魔力というものは極端に少ない。
本調子でないのに無理をしたのが祟ったのだろう。魔力による自動治癒が限界を訴えていた。
「愚か者が。こやつの不調も気付けず、何がサーヴァントだ」
後ろから肩に腕が回され、もう一方の手が唇に乗った。
普通時臣さんと行動を共にしないらしいギルが、何故今回に限っていたのかは知らないが、少なくともセイバー、ひいては私のフォローに回ってくれたようだ。
唇に乗った手には、認識するのは難しいが、魔力を補填する何かがあった。
無理矢理ながら、それが咥内に押し込まれたおかげで調子が回復している。
「白野。小娘が外出したいと言おうが、貴様が自重しろ。
己の魔力の少なさは、貴様自身がよく解っておろう」
「奏者……、すまぬ。余のせいで……」
『いいよ、別に。王様は我が儘じゃなきゃ。苦しくなったらちゃんと言うから、ね?』
「阿呆。貴様のお人好し具合は重症だ。その点において、貴様は信用ならんから言っている」
「奏者……」
仔犬のようにしゅんとしているセイバーの頭を撫でる。
「驚きだな……。あれほどまでに、サーヴァントを手懐けるとは……」
「師よ。白野をどう扱われるおつもりですか」
「王とも良好な関係のようだから、代理マスターとして、前線に出てもらいたい」
「……時臣くん。それは私でも流石に容認できんよ。
白野にはサーヴァントに関して、異例の力があるのは認めよう。だが、それだけだ。それ以外の実力は皆無。
今から君が動くにも怪しまれる」
「無論私とて、彼女を傷付けるつもりはありませんよ。本当に前線に出すわけじゃなく、関係の問題です」
会話の内容は聞こえなかった。途中目があったが、その時のあの人の微笑みは、恐ろしくて忘れられなかった。