Fate/Zero -EXTRA-

□EXTRA 01
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深く、暗い、虚数の海に解かされて。気が付いた時にはいつぞやの日本にいた。
私がこの齢で、ここにいるということが語る事実。この日本は、私が知る日本の姿をした別物であるということ。
月での勝利を決定づけられた総て私、岸波白野の運命だということ。

『……どこ……』


幼い時に、両親を失った。理由は解らない。私は孤児だった。
引き取ってくれる身内もおらず、それでも曰く、お人好しな性格のおかげで、何とかやってきた。
そんな私は、あるとき神父に引き取られた。名前は言峰璃正。
月の聖杯戦争で運営NPCだった神父と、同じ名前の息子を持つ神父さんだ。何の因果かと思った。

「父上、何故あの子供を引き取られたのですか?」

「……実はな、白野には僅かな魔術師の素養が見られたのだ」

「!それは……」

「もし魔術協会に露見すれば、……言わずとも解るな?」

別に聞いてショックを受けることは無い。
このせかいがどういった世界であるのかは、聖杯の恩恵を受ける私は知っていた。
どちらに転んでも、私には利益は無い。みすみす社会に殺されるくらいなら、確実に今を生き延びる道を選んだ。
私はまだ、約束を果たせていない。あのサーヴァントと、また会わなければならない!


それからおよそ10年、私は魔術の存在など知りもせず、できる限り言峰親子に迷惑を掛けないように振る舞った。来る冬木の聖杯戦争までは。


月の聖杯により、聖杯戦争の開始が告げられた。
迂闊な行動がより不可能になったが、約束のサーヴァントがいるかもしれない。
それなら、危険を承知の上で何らかのアクションを起こさねばならない。
そう思いつつ、神父様に頼まれて、教会で留守番をしていた。

『退屈。神父様、早く戻ってこないかな』

そしてサーヴァントの手掛かりを探す。私を形成した前世の岸波白野は、少なくとも4人。
記憶の中の、私のサーヴァントは4騎確認できたからだ。
冬木で現れる7騎の中にいる可能性は捨てきれない。

『うーん、どうにかできないかな……』

神父様の厚意で生きてこられたという意識はある。恩を仇で返すつもりは無い。
しかしここに留まることで何かが変わる気もしない。

『敷地内を動くのは良いよね?』

少しだけ外の空気を吸いに出よう。この時の行為が間違い/正解であったことを、私はまだ知らなかった。
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