VVV -歌う青-

□歌う青 03
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あの後、私達はARUS軍に助けられ、学校に戻ってきた。

「学校…なんか、凄く懐かしいです」

「昨日まで、授業受けていたのにな」

『酷いね…』

「「祠…」」

「祠が、何」

「えっと…」

「そ、その…」

三者三様で反応する点は違うものの、皆、壊れたモジュールに心を痛めていた。
そんな中、校舎内に残っていた生徒がハルトに気付き、あっという間にハルトの周囲を取り囲んだ。
その様子は、すっかり英雄。家族だったハルトがどこかに行ってしまった気がした。


ハルトは自身を化け物と称した。それは今でも気になって仕方がないらしい。
学校の保健設備を使って、ハルトの診断をすることにした。

『体温、脈拍も正常』

「ほら、なんともねえじゃん」

「でも…。正常とは言えないです」

言っているそばから、血液を採取するためにつけた傷が、修復されてしまった。
ヴァルヴレイヴのパイロットになったのだから、それは仕方ないことなのだが、それを言うわけにはいかない。

「やっぱり、お医者さんに…」

「軍隊なら、軍医がいるよな」

「やめた方が良いわ。モルモットにされるだけだよ」

「そんな…」

「大人って、汚らしいものよ」

『全部じゃないけど…同意する。記憶を失う前の私は、大人から酷い仕打ちを受けてたみたい』

「先輩?」

よく知らないサキちゃんは、私を訝る。と同時に、ハルトが苦しみ始める。あの衝動だ。

「おい、ハルト!ハルト!」

「ハルト…さん?」

「うああああああああああ――っ!」

ハルトはそのまま、キューマ先輩に襲い掛かった。

「やめろっ、ハルト!ハルト!」

「ハルトさん!」

「何なの?!」

『ハルト止まって!お願い、大丈夫だから落ち着いて!』

後ろから抱え込むようにハルトを抱きしめる。そうしなければいけない気がした。

『大丈夫。大丈夫、だから…』

徐々にその震えが治まり、ハルトは正気を取り戻した。
しっかりとハルトであることを確認し、私はその体から手を放した。

「僕は…何を?」

「突然襲い掛かったの、ヴァンパイアみたいに!」

「!あの時と同じだ。やっぱり僕は、人間じゃないんだ!皆にも何をするか解らない」

「落ち着けハルト!」

「でも!」

「ハルトさんは、その力で私達を救ってくれたじゃないですか…!」

「だけど、僕は…」

「それに、ソラウ先輩は襲わなかった。一番近くにいたのに」

「家族だから、傷付けたくない。その思いが勝ったんじゃないのか?だったら、お前は人間だ。
家族を思いやれるだけの、心がある!」

「ソラウ…、有難う。僕を、戻してくれて」

私は静かに首を横に振った。私にできることなんて、たかが知れている。
戦えない私に残されたものなんて、ハルトを支える力くらいだ。記憶なんか、思い出せなくて良い。
あんなもの、見たくない。するとノックの音がした。七海先生が扉を少し開いて、中の様子を伺う。

「時縞くん、いる?ちょっと、良いかな?」

「…はい、何ですか?」

「フィガロ議員が、貴方と話したいって」

「フィガロ、議員…。僕と?」

すかさず、その手を握った。気をつけてね、の言葉と共に。
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