BSD -影の魔女-

□影の魔女 03
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花塗れになった床の清掃は、功労者とは云え私が原因であるが故に、自ら掃除していた。
自分で蒔いた種、(もとい)、花だ。乱歩先輩と敦君は一般的な探偵社らしい仕事に出て行った。

「お邪魔します。二階堂さん」

『給仕さん。どうかされました?』

襲撃を見込んで、いつもより早く出てきていたので、何か粗相をしたのであれば申し訳ないと思い、入口に近付き首を傾げる。
するとクレジットカードを差し出された。そう云えば置いてきてしまっていた。

「太宰さんの分もとのことでしたが、相当な額ですよ……?」

『大丈夫ですよ。これで破綻する、なんてことはありえませんから。それにちゃっかり清算済みでしょう?』

「それは勿論。今回はカードの返却と、太宰さんの対応についてお話があって……」

『今回のことは内密に。いつも通りに今後も取り立てて下さい。
もし戻ってくるのであれば、私に返済という形で』

「では今後のツケも、二階堂さんに回す事に?」

『いつも迷惑を掛けていますから、これ位はさせて下さい』

「それは良いんですけど……献身的ですね……」

『あれでいて大切な上司ですから』

「こんなに可愛らしい恋人さんがいるのに、あの人は何しているんですかね」

『……また太宰さんが法螺吹き込んだんですか。国木田先輩。太宰さん、探してきますね』

了解の応答を受け、給仕さんの横を擦り抜けた。

「行ってらっしゃい。……そう云えば、いないこと、何で御存知なのかしら?」
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