FGO -バグ発生-

□バレンタイン
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サーヴァントにも料理の得手不得手がある。チョコレートにもそれは反映される。
女性サーヴァントから用意された、ぐだ子宛てのチョコは各自の特徴をよく表していた。
食べる分には色々諦めた。それは良い。問題なのは私だ。
私からチョコを貰えないのかと、サーヴァントとロマンがソワソワしている。

『オリオ……オリべえの救出もあるからな……』

本当に小さな声で、タスケテーと聞こえるリアルな熊型のチョコレートは、アルテミ……ミス・オリオンことオリオンちゃんからの贈り物だ。
なんでも、女子サーヴァント相手にチョコを強請ったオリべえを物理的にチョコにしたとか言っていた。
しかしマスターとは言え、私も女子だ。良いのだろうか?

『……何はともあれ、オリべえをどうにかしよ……』

清潔なタオルを用意し、オリべえを連れて厨房へと足を運んだ。


タオルの一部分を、温めに沸かしたお湯に浸す。そしてオリべえの顔からゆっくりとチョコを拭う。
全身を綺麗にした後、少し冷めた湯鍋にオリべえを入れれば完了だ。

「ふえ〜助かったぜ、士野香」

『懲りないね、オリべえ』

お恥ずかしい限りですと赤面するのは可愛いのだが、中身が女誑しなのはいただけない。
オリオンちゃんじゃなくても浮気にはキレる。恋人が健在なら尚更だ。
良いというわけではないが、せめて恋人がいない状態であれ。

「それで、士野香はチョコを用意しないのか?」

『したくない。英霊の数だけ用意なんて無理!』

「ほんのちょびっとでも良いんだからな?無いよりある方が嬉しいに決まってる」

無視を決め込み、手についたチョコを洗い流す。油分で少しだけ取れにくい汚れが、ゆっくりと落ちていく。
ぼんやりする思考に鞭打ち、手を擦るために合わせようとした。

「なんか嫌な思い出でもあるのか?」

見知らぬ、されど聞き覚えのある声を持つ青年に手を拭われる。急展開に頭が追いつかず、されるがままになる。
脳髄を沸騰させるほど、状況整理に全神経を働かせる。

「ん、これで良いな」

『な、何をどうしたら人型に戻るんだ!?』

「ああ。ちょいとアルテミスから魔力を奪えば、な」

なんでこのタイミングでそんなことをしたのかは聞くまでも無い。
しかしザビ子やぐだ子はフラグ建築士だが、私はそんなはずがない。
ただダビデの一件もある。冷静に、何事かを問い質してみる。

「士野香は……うん、からかいたくなる。魔術を平面的に捉えてきた点で、マスターと違う。
庇護欲と嗜虐心を駆り立てられるんだよ」

なんて迷惑な。流石、神話の時代を生きてきた英雄であると、感心している場合じゃない。
つまり、私と彼女たちは無知の種類が違うということだ。
そしてどちらも別種のフラグを建てる。全くの思考外の出来事。

『なんで人型に戻った』

「そりゃ、チョコを強請るため?」

『疑問符をつけない、他の意味を含ませようとしない!……他言無用ね』

「おう。強硬手段に出なくて助かった」

ポン、と可愛らしい音を立てて熊に戻る。
恐らく匂いにつられた他の面々にも要求されるのだろう。そしてそれを見た者もまた然り。
がっくりと肩を落とし、ブラウニーの徹底細分によるチョコの量産を始めた。
……後日、オリべえはミスに絞められたそうだ。



※次項以降『有難みに掛ける義理ですが……』=一部男性鯖ピックアップストーリー。
更新日不定。1人1頁。
2頁→ジークフリート
3頁→エミヤ
4頁→ギルガメッシュ
5頁→ロビンフッド
6頁→アーラシュ
7頁→クー・フーリン(ランサー)W
8頁→アンデルセン
9頁→諸葛孔明(エルメロイU世)
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