FGO -バグ発生-
□過去の記憶
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「あら、士野香じゃない」
「ます、たぁ……」
『おおう、お初にお目にかかったコンビだ……』
「?」
「画面越しに見ていたのでしょう?」
『肩車の2人を生で見るのは初めてでしょー』
「画面越しでも貴女の視線は感じていたもの」
『流石、宝具が視線の女神様』
「……貴女、意外と図太いのね」
『へ?』
「あの子は上手くいったのだけど」
なるほど、魅了のことを言っているらしい。こちとらエウリューのキャラクエでそれは知っている。
魔力も何もかもぐだ子依存なのだが、どうも精神系の術に強いのは私のせいらしい。
ディルの魅了も平気だったが、それは人によっては一般人でも対抗できるものらしいので(確率的には極稀)、単にそういうことだと思っていた。
『まあいいや。アステル、私があの子じゃないことは解ってるんだよね?』
無言でこくり、と頷かれた。
狂化スキルで細かな反応ができないから、一貫して私をマスターと呼んでいるらしい。
不可抗力だ。区別がついているのならそれで良い。
「でも、この状態の私たちに、何か執着でもあるの?」
わざわざ反応することでもないと思うけど、と続けたエウリュー。
確かにそうだが、私はそれなりにあっちで色々と見聞きしているからこそ、思うところがあった。
ヘラクレスと、ある世界でのマスターであった彼女。父娘のように寄り添った2人。
時として彼女はヘラクレスに肩車をされたり、首に掴まって進撃したりしていたが、私にはそれが目前の彼らに重なるのだ。
彼女は父親に飢えていた。本人は父親を嫌悪していたが、その存在は欲していた。
だからそのものが似ている、なんてことはない。
単に幼女をごっつい男が抱えるというシチュだけの安直な考えで、正直発狂しそう。
自己矛盾に頭を悩ませていてハッとした。
『今何時!?』
「あ……に、じ……」
「もうすぐ貴女の魔力が高まる時間ね」
『今日こそ礼装を引き当てるんじゃあああ!!』
「……アステリオス、士野香を抱えて召喚の部屋まで連れて行ってあげて」
「わ、かった……!」
『わわ、ありがとエウリュー!』
ウインクで返された。あ、まずい。やられたかも(気のせいだけど)。
このカルデアでは召喚用の魔法陣に聖晶石を投げ入れ砕くことにより、魔力が充填され、英霊や礼装の召喚ができているらしい。
石で召喚とはなんぞや、と思っていた(但しガチャである以上、特に深くも考えなかった)が、言ってしまえば枯渇したHPやMPを薬で回復するのと同じ要領……だと解釈した。
『おしゃー!!時は満ちた!私にうっかりはない!今日こそ10連で……幸せを掴むん、じゃあああああ!!』