とうらぶ -蓬日和-

□蓬日和 04
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いよいよ定例報告会の日だ。一期一振(一期さん)に同行を依頼し、政府指定の報告会場へ向かう。
話し合いの場では武器の所持は禁止であるため、本日の護身刀である加州清光は一期さんに預け、待機していてもらう。私が来たのはわりと早い方だったらしく、少し年上と思われる女性が待っていた。

「ん?君は月の長(※定例報告会に参加義務のある国主審神者)かな?」

『はい。貴女は……』

「ああ、失敬。聞くときはまず自分からだな。
私は時の長(※定例報告会に参加義務のある守時審神者)、維新守時の和葉(カズハ)。宜しくな!」

朗らかに握手を求めてきたため、こちらも同じく応じる。
軍服をかなりラフに着用し、顔も名も隠さないことが、私にはとても新鮮だった。
他の人が来るまで、私も垂衣を外し、名を明かして女性同士の話に心を弾ませた。

「あんたとは話が合うよ!あとで時間があれば、延長戦と行きたいんだけど……」

『!私も!お願いしたいです』

「おーおー。んじゃ、終わったら話そうな!」

ぽんぽんと頭を撫でられ、同じ女性だが、少しだけぽーっとしてしまう。
正気に戻って邪念をぶんぶんと振り払い、報告会のために呼吸を整える。

「――それでは、定例報告会を開催する。まずは各国主より――」





『――山城国主として出した私の結論は、各審神者が向かう時代には微々たる違いがあるものと考え、時間軸の統一を望めない限り、延々と不毛な争いが続くものだと思われます』

「だが軸の統一は、多くの軸の中からひとつを選ぶわけで、もし我々の生きる軸が他の軸だった場合、それこそ不毛――」

「発言を慎め。まだ彼女は意見を述べている。自ら戦うこともせず、戦う力もない。
守られているだけの貴様らに、審神者のことをとやかく言われる筋合いはないぞ」

「ぐ……、しかしだな!!」

『……時間軸の統一というのは、どれか1本に絞るという話ではなく、多くの軸を照合して、全体で共通する点の制圧ですとか、全ての軸の強制統一ということです。
後者は現実味を帯びていないので、前者の精度を上げるしかないでしょう。
良くない手段としては、歴史修正主義者の誕生を、現代で可能な内に防ぐ、とかですね』

「それは!」

「山城国主ちゃん。確かにそれは良くない手段だ。一歩間違えれば、俺達とて同罪になる」

「でも着眼点は間違ってない。山城国主、貴女の意見は終わりか?
それを受けて、伊勢国主としても報告をしたいと思う」

『あ、ひとつだけ……。司会者は口を挟むものじゃないので。以上』





いつもは1時間ほどで会終わるらしい報告会が、倍以上に伸びた。主に私のせいだろう。

「よっ!お疲れ」

『和葉さん……、お疲れ様です』

「浮かない顔だねえ。もしかして、さっきの気にしてる?」

『そりゃあ、まあ……』

「大丈夫だよ!時の長たち皆、あんたの話に同意してた。じゃなきゃアシストなんてしないさ」

わしゃわしゃと頭を撫でられる。本当にお姉さん、と言う感じだ。

「主」

『一期さん。お待たせしてすみません』

「いえ、お気になさらず。そちらは?」

「時の長、維新守時の和葉。あんたの主を気に入ってね。この後食事でもしたいと思っていたんだ」

「そうですか。良かったですね、主」

『はい!あ、和葉さんの近侍は?』

「私の性格が移ったのか、少々奔放でね。勝手にどっか行った」

……豪快過ぎる。この人の口ぶりからして、もともとそういう性格ではない刀が近侍なのだろう。
これがヤヒロさん……山姥切国広だったら、と思うと、少し興味が出るというものだ。

「まあ式神飛ばして終わったことは伝えてある。すぐに来るだろうから、もう少し待ってもらうけど……」

『私は大丈夫ですよ。もっとお話ししたいです!』

「本当かい?嬉しいことを言ってくれるねえ、千穂は」

「……主!和葉殿!!」

飛んできた矢は、和葉さんに腕を引っ張られたおかげで、私に触れることはなかった。
狙ってなのか何なのかは知らないが、審神者を狙った敵襲であることは確かだった。

「運が悪いなあ。多くの審神者が集まっている時に襲撃かい」

『和葉さん、離して。私も審神者。自分を守るくらい、してみせます』

「うーん、及第点だ。ここには残念ながら、戦えない審神者も多い。それを守りながら、撃破しないといけない。
あんたには、それができる?」

『できないなんて、言える状況じゃないですよ!』

「ま、そりゃそうだな。……近侍なら、ちゃんと主を守るこった!!」

「忠告、痛み入ります!主、行きますよ!」

一期さんの掛け声に合わせ、加州清光を抜刀。和葉さんも二丁の拳銃を構えた。
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