珠姫
□頭首就任
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時は戦国。
各国の頭首が闘いに咲き乱れる日常を送る日々。
ここは、とある国。
小さいながらも豊かな国で、民もまた幸せに暮らしていた。
しかし、小さな問題がある。
この国を統べる頭首は、しばし子宝に恵まれなかった。
正室のみを一途に愛する彼には、側室もいなかった。
才気に溢れ、文武両道の比類なき彼にも、どうしようもないことがあったのだ。
時がたち、御仏がようやく重い腰を上げて下さったのか、御台所がご懐妊。
珠のようなお子を御生みなされた。
見目麗しいそのお子は、両親の愛情を一身に受け、すくすくと御成長なさったそうな。
母親譲りの美しさと、父親譲りの文武両道ぶりは、他国にまでその名をとどろかすほどだったという。
「我が君は、奥州筆頭の若頭ですらその名が霞むほどですな!」
「いやいやまったくだ。見よ、あの剣舞、弓、槍、全てにおいて精通なさっておる」
「それだけではない!琴に筝まで御弾きになさるお姿は、野の花におちる朝露よりも輝かしい」
民も、軍の者も口ぐちに褒めたたえる。
そして、賢人とうたわれた頭首は流行病に倒れ、美しく優しい奥方も、後を追うように亡くなられてしまったのだ。
そして、若くして彼は国を背負う立場と相成ったのだ。