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□わんこ足跡2
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早朝のことである。
勝呂竜士はいつも通りに日課のジョギングをしていた...はずだった。
「(やっぱ、早朝のジョギングはええなぁ...ん?なんか声がするよぉな気ぃが...)
.....げっ」
『すーぐーろりゅーじくーん!
おっはよーっ!』
自動販売機の前にあるベンチでお茶を飲みながら犬井 りあのが屈託の無い笑顔でそこにいた。
早朝のジョギングは良いもののはずだった...が、一人の女子によって最悪なものになったのだった。
名前まで呼ばれて更に目をあわせてしまったのだ。今更、気付かないフリをして通り過ぎることはできない。
「なんで、お前がここにおんねん。まさかつけてきたんか。」
『いやいやっ!まっさかーそんな事ないよ!たまたま早起きしちゃってさ。二度寝も出来そうにないからこうしてベンチでくつろいでたんだ。』
「ほぉか。」
流石につけてきたらストーカーだ。常識はあるのだろう。(はじめましてなのにいきなり告白する時点で常識はあるのかどうか疑うが)
自動販売機でスポーツドリンクを買い乾いたのどを潤す。
『いやぁ...やっぱこうやってたまたま会ったりするのって運命なのかねぇ』
「ぶっ げほっげほっ
なに言うとるんやっ!」
『あははっ何むせてんのさー』
「お前のせいや!」
なんというか、犬井には振り回されてばっかである。
『あはははっ勝呂竜士くんは面白いなぁ』
...不覚にも笑顔が可愛いと思ってしまった。その笑顔は幼いが桜色に色付いた頬や長いまつ毛が女性らしさを引き出していてとても綺麗だった。
「( .....っ!何思うとるんや、自分...煩悩をたたなあかん。落ち着け...)俺はジョギングの途中やし、もう行くわ。」
『えー!勝呂竜士くん好きだから行かないでー!好きだから!ね!』
「好きだからてなんやねん!アホか!...はぁ、じゃあな。」
『えー、ばいばーい。あ!今日お昼休み会いに行くねっ!』
「来んでええわ!」
厄介な奴に好かれたもんやな、と思った。