小説
□前世と同じ人生を送っていたら、何故かトリプルフェイスが恋人でした。1
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「お前は!なんでこんなことも出来ないんだ?!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
幼少期から続く暴力。
長袖や長ズボン等を着たら隠れる場所に幾つもの痣や傷を付けられた。
理由は簡単なものだった。両親は再婚だった。私は母の連れ子で父に迎え入れられた。あの時、母はこの男性はお金を持っている、という点だけで近付き再婚したのだろう。
それが、2歳の時だった。父は私に優しく接してくれた。
でも3歳の時に妹が生まれた。妹が生まれると父の態度は豹変した。些細なことで殴る、蹴る、暴言を吐かれた。
所謂、虐待だと知ったのは小学生になってからだった。小学校3年生の時にまた妹が生まれた。その時母が帝王切開で産んだ為、家には私と妹と父だけになった。
食事は私が作った。でも、不味いと言われて殴られた。妹は美味しいよお姉ちゃんと言ってくれたが、父はそれが気に食わないらしく更に私を殴った。
ある日、家事が全て終わり自室で寝ていたら父が入ってきた。
「おと、さん?」
「……。」
「やだぁ!やめて!」
「うるさいっ!大人しくしろ!」
それが性的虐待だと知ったのは中学生の時だった。何度か児童相談所に駆け込んだ。
でも、証拠がないと言われて毎回家に帰らされた。当然、そんなことをしたら父は激怒して酷くされた。
高校生になってアルバイトを始めた。私は家に帰りたくなかったので、Wワークという形で働いていた。
お金は貯めて、使う時は使っていた。高校を卒業後、スーパーに就職した。アルバイトをしていたおかげで、仕事はすんなり覚えれた。
会社の歓迎会で帰りが日付を回ってしまった。やばいと思って急いで車で帰った。
家に帰ると父に暴言を吐かれ、殴られ、蹴られた。カッとなった私は初めて口答えをした。
「もう、うんざり!母さんは助けないでみてるだけ!父さんはすぐ暴力をふるう!こんな家、おかしい!出ていく!」
そう叫んで自室から必要最低限のものを車に積み込んだ。
最後の荷物を積み込む前に、父が包丁を出して切られそうになった。
急いで車に乗りこみ、実家を飛び出して付き合っていた彼氏の家に飛び込んだ。
彼氏───降谷零は快く受け入れてくれた。勿論、虐待の事実は隠して尚且つ先程の包丁事件も隠して、だ。
彼とは職場で出会った。というのも、私の店舗の店長が私に性行為を強要してきて、性的虐待に慣れていた私はそれを甘んじて受けていた。
その愚痴を降谷さんに話していたのだ。そんな降谷さんは実は警察官で、危ない組織と繋がっていた店長の秘密を暴くために潜入していたらしい。そこで私は思い出す。
前世の記憶を。うわー…前世と同じような家庭で生まれてんじゃん私……。
うわ悲しい…しかも前世の死因実家に戻ったストレスで自殺じゃんか…今世では絶対実家に戻らないそ…。
コナン沼ったの支部で警察学校組関連の読み漁ってたからだぞ……警察学校組救済ばっかり読んでたからだよ…。ってことは、警察学校救済出来る夢主になったってこと??じゃあ降谷さんに年齢聞こう!!!
「…詩織?」
「……あの、降谷さんって…今お幾つですか…?」
「25だけど…どうした?」
あーーーーっ!!!諸伏景光さんと伊達航さん亡くなる前ですねーーー?!?!松田陣平さんと萩原研二さんは偶然(というか色々あって)助けてたみたい(前世の記憶ないのに凄いね!わたし!)なんだけど、諸伏さんと伊達さんまだだよねー!!!うわーーーなにこれ。
なんで名探偵コナンの世界に入って尚且つ安室透こと降谷零と私はお付き合いしてるの???なんで???前世のセンサー働いてるの??
「いえ…若く見えたので、年齢聞いてなくて…きいてみたかったんです。」
「…そうか。」
「あの、お仕事戻らなくて大丈夫ですか?忙しいって前に聞いたんですけど…。」
「あぁ、大丈夫だ。風見にさせてる。」
風見さああああああん!!本当に申し訳ございません!!!私が!!降谷さんを!!!呼んだせいで!!お仕事増やしちゃってごめんなさい!!!
「それより。」
「はい?」
降谷さんの顔がぐいっと近くなる。ひええええ推しの顔が近いよぅ…。
「なんで、降谷さんって呼ぶんだ?」
「…へ、」
「いつもは、零…と呼んでくれるだろう?」
「零…さん、」
「零。」
「……れぃ…、」
「うん、いいこ。」
そういう???まじで???私降谷さんのこと零って呼んでたの???まじで??
信じられない……今世の私何してるの……推しに失礼だよ……年齢差7つあるのにさんも付けないでなにしてるの……!!!
そんなあわあわ思っている私を見ながらくすくす笑う降谷さんの電話がなった。プライベート用でも警察用でもない、組織用のものが。
ちらりとこちらを見て、玄関の方へと向かう降谷さん。その間に荷物片付けようと思って荷解きをする。
あらかた終わった頃に降谷さんが戻ってきた。
「明日、仕事は休み?」
「はい、休みですよ。」
「…同棲するし、部屋見に行かないか?あと、家具とか。」
「…へ?」
「実を言うと…犬を拾ってしまってね、ここ、ペット禁止なんだ…。それに、君と暮らすなら、もう少し広くしたい。」
ハロくんですね?!?!かわいいかわいいハロくんですね?!?!めちゃくちゃハロくん可愛くて前世ハロくんっぽいわんこ探したもん!!まぁ、ハロくんっぽいに猫にしたけど〜〜!!(だって、ハロくんっぽい子はお値段高かった!!)
「いいですよ、暇だし…その、零と…デートしたいし!」
「っ…!そうか、」
頭を撫でられる。
なにこれめちゃくちゃ気持ちいい…ほわんとする。
やばいね!!これは!!前世腐女子で夢女子の私は落ちるよ!!飼い主に撫でられてすりすりする猫の気持ちわかったかも!!!
「詩織は僕のベッドで寝てね。」
「え、疲れてる零こそ!ベッドで寝てください!」
「僕はソファでも寝てるから大丈夫。」
「私もソファで寝れます!というか、2人で寝ましょ?」
「……え?」
「うん?」
ぴしっと固まる降谷さん。
あれ、私変な事言った??2人で寝たらいいんじゃない?としか言ってないよ?
「……それは、誘って、る?」
「……ぁ、」
女の子に言う感覚で言っちゃったよ…うわ馬鹿じゃないの、私。
降谷さん、成人男性だからそれなりに性欲あると思うからそんなこと言ったら誘ってると思われるでしょ?!
性に無頓着だから気づくの遅かったーーー!!!
「誘って、ないです…!ただ、私が…一人で寝たくないなぁって、おもって…。」
「……そう、だよな。うん、わかった。一緒にベッドで寝よう。」
おいで、と言われて降谷さんの後を追い掛けて寝室へお邪魔する。
おぉ、セミダブルベッド使ってる!掛け布団羽毛だ!すげぇ…!!
きらきら目を輝かせていると降谷さんに腕を引かれそのままベッドへダイブする。
びっくりして目を瞑ったので、目を開けると降谷さんの胸筋が目に入る。ひぇ……すごい筋肉…。てか、腕まくらされてる?!ひぇ、まじかよ…。
寝かせるように頭撫でられてる?!降谷さん、すげぇな!!!そんなこと思ってると睡魔がやってきて目を瞑りそうになる。
「……おやすみ、詩織。」
「はひ…おやすみなさい、零。」
ふわりと微笑む降谷さんに挨拶をしてから寝た。
ちゅんちゅんと鳥の鳴き声で目覚める。横にいる降谷さんを起こさぬようにそっとベッドから起き上がる。歯を磨き、顔を洗う。
そのまま化粧をしてから、お世話になる降谷さんの為に朝食の準備をしようと思い、キッチンへ向かった。