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□第11章:特別という名のスタートライン
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いつの間にか放課後になっていた。
前以て大輝君に「勝手に帰るなよっ」と釘を刺されてしまった。


「別に帰りたくても帰れないし………」


丁度、帰りの身支度をしていたら担任に雑用をたんまりと任されてしまった。
正直なぜ私が?


「別にいつもの事だから良いけどさー」


予想以上に教室の中はガランと寝静まっていた。
グランドからは部活をしている掛け声や楽器の音がした。


「地味。地味すぎる……」

5枚ほどプリントをまとめてホッチキスで端を綴じる簡単な作業。
かれこれこの地味な作業を約30分ほどやっている。

「何やってんの?」


大輝君が薄暗い教室を見て言った。


「遅かったね。何か言われたの?」
「あー…、愚痴愚痴と文句言われたような……」
「……聞いてなかったの?」
「んー、多分?」
大輝君のあやふやな返答に呆れてしまった。


「桜サンは、何してんの?」
「………雑用」
「頼まれたの?」
「うん。よくわかったね」「なんとなく」
「…………」


大輝君は一通り私の前にあるプリントを見渡していた。


「そういうのよく頼まれるよね。断ればいいのに」


席を立ち上がり、教室の棚からホッチキスを取り出してプリントの端を綴じ始めた。


(手伝わなくていいのに……)

「ありがとう」


それから私達は黙って作業をしていた。
作業してから何分か経過した時、沈黙を破るように大輝君が口を開いた。


「……前から聞きたかったんだけど、怜治とは前から知り合いなわけ?」


急な質問と怜治君の名前を聞いて、ビクッと顔が強張ってしまった。
いつかは聞かれる事だと思っていた。


「うん、知り合いかな?怜治君だけが悪い訳じゃないよ……」
「どういう意味?伶治が関わってきたんじゃないの?」
「まあ、そう思うよねー」「…………」


手に持っているホッチキスの動作を止めて大輝君を見た。
私の発言はきっと、大輝君にしたら何もかもが曖昧。

「………多分、寂しかったんだと思う。誰かに傍にいて欲しくて、私を必要として欲しかった」
「…………」


黙って聞く視線が私に向けられる。


「私、怜治君とは中2の頃知り合ったの。大輝君が思っているほど私は真面目何かじゃなくて、良い子でもないよ」


大輝君はそれまでやっていた作業を止めて私の顔をゆっくりと見た。
その時の彼の表情は不機嫌そのものだった。
私は、また作業に戻りながら話を続けた。


「偶然なんかじゃなく、怜治君から誘って来た訳でもなくて、私が怜治君に声をかけたの」
「………何で怜治にしたわけ?他にも人はいたでしょ?」
「それは、今でもよくわからない。思うと怜治君が恐怖よりも危ない人だってわかってた筈なのに、それでもあの時の私はそういう事はどうでもよくて、ただ、誰かが傍にいて欲しかったの」


私は最後のプリントの束をホッチキスで綴じて、大輝君に笑った。



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