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□希望アンプリファー
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―――――ピンポンパンポーンッ
…まただ。
この島に連れてこられて、一体何回この音を聞いただろうか。
快活な口調とは裏腹に、ソイツはいつもとんでもないことを口にする。そして、その行為を心から楽しんでいるのだから尚更タチが悪い。
白になるか、黒になるか。信じるか、信じないか。偽善を取るか、我をとるか。
どちらに転んでも、―――――絶望。
……今回は、なんだっていうんだよ。
耳を塞ぎたい衝動に駆られながらも、ゆっくりとベッドから起き上がり、おもむろにモニターを見上げた。…どうせ、それ以外の選択なんてないのだから。
ワイングラスを片手に、俺達を見下すように鎮座するソイツ、…モノクマは、いつも道理の生々たる声で俺たちに告げた。
『オマエラに朗報だよ!』
…何が朗報だッ。
怪しさ満載のモノクマに、1人ツッコミをかます。モニター越しのモノクマはそれに気づくことなく、話を進めた。
『最近さ、ツマンナイんだよねぇ…。殺し合いも起きないし、起きたとしても、マンネリだよマンネリ!』
「ッ…!自分が…ッ!」
自分がやらせてるくせに。思わず叫びそうになったが、ぐっと呑み込んだ。どうせ、言ったとしてもモノクマには届かないんだ。そんなの、虚しいだけだ。
まるで、舞台の観客か、映画の監督でもあるかのような口ぶりで、モノクマは「うぷぷ」、と独特の笑みを漏らした。
『…てなわけで、ボクはもう飽きちゃったんだよ。そ・こ・で〜ぇ……』
中途半端な溜めを入れて、モノクマは高笑いをしながらとんでもないことを言い出した。
『―――――オマエラに、転入生をしょーうかーいしまーッす!!』
「はぁッ!?」
思わず身を乗り出し、モニターを食い入るように見つめた。
転入生って…誰かを誘拐してきたってことか!?その転入生も、コロシアイに巻き込むつもりじゃ…!…ッいや、もしかしたら黒幕の刺客ってこともありえるんじゃないか…!?
混乱している俺をよそに、モノクマは哲学でも語るような神妙な口調で話し出した。
「どんな漫画でも、イレギュラーがいなきゃツマンナイだけでしょ?バトル漫画でも、ジョーカーは必ずあるものなんだよ、」
―――そのほうが、何倍も面白いしねッ!
満足げにそう言って、俺達に「ジャバウォック公園」に集まるよう指示をし、モニターはプツリと無情な音を立て、映像は途切れ黒と化し、コテージに静寂が広がった。
…それから、どのくらい茫然としていただろうか。
思考が考えるのを投げ出したくなるくらい…残酷な現状だった。
ようやく、仲間のことを解りあってきたというのに、イレギュラーだって?
それをきっかけに、また互いに疑心暗鬼し出したらどうするっていうんだよ…!………いや、
無気力に溜息を吐き出し、力なく立ち上がった。
―――黒幕は…それが狙いなんだ。
だったら…もう腹を括るしかないじゃないか。
自分にそう言い聞かせ、俺は1人、ジャバウォック公園へと向かった。