小夢の扉
□欠けてる何か
1ページ/1ページ
『つまんない』
これは、何度繰り返しても何度小言を言われても治らない。
言わば、癖ってヤツ。
何でだろね?何か、何かが足りないんだ。
正直、もう殺しにも飽きてきた。
だって皆同じ。
同じように怯えて、同じように叫んで、同じように血流して、同じように死ぬ。
冷める前は楽しかったんだけどなー。
殺し方も武器も決め台詞も毎回変えたりして、新しいゲームをどうやって攻略しようか悩むアホな子供みたいに、楽しんでさ。
でも最近、やっぱりいつもみたいに飽きてきた。
熱しやすく冷めやすいってヤツ?
そういう性格。
「う゛ぉおい…またそれ言ってんのかぁ?」
『あ、センパイ。終わったんスかぁ?』
「まぁなぁ。今回のは骨が無さ過ぎて退屈だったぜぇ」
『ふーん…退屈…ね、やっぱセンパイもつまんないんスか?』
「あ゛ぁ?」
そんな睨まなくても…って、目付きの悪さは元からか。
『んー…じゃ、センパイは生きてて楽しいっスか?』
「はぁ?」
いや、そんな“何だコイツ頭イカれたかぁ?”みたいな顔しなくったっていーじゃん。
軽く傷付いたぞ私。
『私いつも思うんスよねー。私達の生き方が異常で、スリリングで、ゾクゾクするのは分かるんスけど…何か、足りなくないっスか?』
センパイは少し眉間に皺を寄せながら、首を傾げた。
「ならてめぇはここに何を求めるんだぁ?」
何…何だろ?
そう問われても、何も浮かばない。
考えた事すら無かった。
ただひたすらに、得体の知れない“何か”を求めるだけ。
「それが何か分かるまでその何かは得られねぇぞぉ」
『……ごもっとも』
ニヤリと口の端を吊り上げて歩き始めたセンパイ。
そっか、そりゃそうだ。
“何か”が分からなければ“何か”は見えない得られない。
『じゃあセンパイ』
銀を揺らして歩き続ける背中。
「あ゛ぁ?まだ何かあんのかぁ?」
ああ、次は
『“愛”なんて、如何です?』
見付からない“何か”を捜す事にハマりそうだ。