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□禁句にはご注意を
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「うっせえんだよ、俺は何も悪くない! だからそれを下ろせ!!」
 そう言って叫ぶのは、犯罪係数162を叩き出した潜在犯の男。二十歳くらいだろうか。
 いきなり友人と喧嘩をしたあげく止めに来た人に発砲。そして逃亡をしたのを追い詰めて今に至る。
「うるさいのはアンタでしょ、おとなしくしなさい。セラピーを受けるだけよ」
俺の隣でドミネーターを構え凛と言ったのは、公安局刑事課三係所属深見監視官。
 それまで睨みつけていたが”セラピー”という単語を聞いた瞬間、潜在犯はビクッとなった。
――ああ、またこういう反応するのか。追い詰められてセラピーが必要だと言うと、大抵は怯えて怒鳴り出す。そう、こんなふうに。
「セラピーとか言って一生出られねえんだろ!!そんなところに誰が行くかよ!!!」
 ああもう、うるせえ…俺は早く帰ってゲームしたいのに。とぼんやりしながら聞き流す。
 そもそも俺は銃を持っているっていうから来たのに、コイツの銃エアガンじゃねえか。



 はあっと溜息をつくと潜在犯に睨まれた。別にいいじゃねえか、つまらないんだし。
「なあ、深見。俺、先に帰っていいか?」そういう俺はドミネーターをしまっている。
どうせお前がしてくれるだろと含めてそう言いながら監視官を見やる。
「もう少しで終わるから待って」ドミネーターを向けたまま答えられた。
 んー…俺の友人はこういう時は真面目なんだよな。仕方ない。もう少しいよう。
 すると、コイツは何を思ったのか深見に向かって言ってはならないことを口に出した。



「何のんびりしてんだよ、おばさん早く撃つなら撃てば?」
本人は挑発のつもりだったのだろう。恐る恐る隣を見ると怖い笑顔を浮かべている。
 あ、コイツ終わったな。潜在犯に向かって合掌。その間にも深見は潜在犯に歩いて近寄る。
「は?なんだよ、おばはん。あれで撃たねえのかよ」嘲笑しながら更に煽るように言う。
 馬鹿だこいつ(確信)って俺がなったのもおかしくはない。なぜなら深見に「おばさん」は禁句だからだ。
言ったやつは気絶するまでフルボッコ、その後意識が戻ったら毒舌で責められるという悪夢のフルコースが待っているのだ。



――もちろん、ドミネーターは使わない。現に俺に手渡している。そういう俺はどうするか?
 それは当然巻き込まれないように距離をおくくらいだ。
「アンタ、覚悟はできてるんでしょうね?」
「え…? うわああああああああ!!」
その悲鳴から数分後。顔面を腫らした潜在犯を引きずって深見は戻ってきた。
やっぱ怖いな絶対に『おばさん』は言わないようにしよう、と心に決めたのは言うまでもない。
End.


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