トリップしちゃった系女子です
□1初めまして、知ってる人達
7ページ/10ページ
「これから何処に向かうの?」
翌日の午前中。下駄を借りて、沖田くんと土方さんに挟まれて外を歩きながらも、私は行き先を教えられていなかった。
「行けばわかる」
短く気だるげに答えた土方さんを私は目を細めて、抗議の意味で見つめた。が、そんな視線など気にも留めずに煙草を燻らしながら彼は歩き続けるのだ。
「ねぇ……」
「馬鹿が揃ってる所でィ」
今度は左側の沖田くんを見るも、彼は彼でよくわからない返事を返してくるのだった。
答えを諦めた私はわざとらしく溜め息をつく。時折発生する私を挟んでの会話も無視してぼーっと考え事をすることにした。
昨日は結局私のあくびをきっかけに口論は止まって、再び私への質問へと移った。眠すぎてあまり覚えてないのだが、「とりあえず」未来から来たという結論に落ち着いたようだった。
そして私もここが自分のいた世界とは別の場所なのだと完全に受け入れていた。
ここに来てご飯も食べたし、銭湯にもつれていってもらったし、お布団も借りて一晩ぐっすり眠らせてもらったのだ。現実味を帯びてくるのは当然だと思う。
それにしても……二人をちらりと見て小さく唸る。
今更だが、一部の人にとってはこれってすごくおいしい……もとい、幸せな状況ではないだろうか。
土方さんと沖田くん。美形だし、人気もある二人に挟まれて歩くなんて、なかなかすごい経験だ。残念なのは、この状況は私が信用されていないからこそ成り立っているという事実。
「何処まで行く気でィ、迷子のガキ?」
「あ……行きすぎちゃった。でもガキじゃないよ、16歳だし……。もう四年もしたら大人です!」
少し恥ずかしくて、私は小さくはにかんだ。
「嘘をつくのはよくねーぜィ。どうやったらぼけーっとして目的地を通りすぎるような奴が16になるんでィ?」
「年とは関係ないもん!……あんまり」
「あーもう二人ともガキだ。それこそガキくせえ喧嘩してねーで行くぞ」
彼らのことを考えているときに沖田くんから声をかけられドキッとした。変に意識しないようにしなくてはいけない。だって彼らは「キャラクター」なんだから。
「うるせーやいロリコン」
「誰がロリコンだ!」
「あの、行くんだよね! 早く・・・」
下らない言い争いを止めるべく声をかけ、目的地を見上げると、そこには記憶に新しい看板が。
『万事屋銀ちゃん』
なぜここに来る必要があるのか?
頭の中に浮かんだのは、面倒を見きれない私を押し付ける、という憶測。
「そんな顔して黙り込んじまってどうしたんでィ?」
「え……あ、なんでもない、よ」
「総悟、藍川、行くぞ」
「……うん」
沖田くんは総悟と呼ばれたのに、私は藍川と苗字で呼ばれたことに、少しだけ寂しさを感じたのは内緒だ。