トリップしちゃった系女子です
□1初めまして、知ってる人達
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「どういう意味だ?」
怪訝な目を二人に向けられ、どう誤魔化しても無駄だと悟らされた。
話さなければいけない。……私がふたりや、この世界を知っていたことも。……あはは、ちょっと怖いや。
「あの……私……本当は、どこから来たのかも、自分が住んでるところもわかる……の。嘘吐いてて、ごめんなさい」
少年……沖田くんは話がつかめないといった顔で私と土方さんを交互見たが、すぐに視線を動かすのをやめた。
「この町が江戸って言うのも……辺りを観察してるうちに気付いて、わかってた。私の住んでいたのは東京って所で、そこはずっと昔……江戸と、呼ばれていた場所なの」
次はこの世界観の話をすれば良いのだろうかと一瞬言葉を切ったとき、沖田くんが口をはさんだ。
「つまり……未来から来たってことかィ?」
「うん────────え?」
「未来? んなもん信じられるわけねぇだろ。つくならもっとマシな嘘つきやがれ」
「今は天人なんかもわんさか蔓延る世の中でさァ。わかりやせんぜ土方さん」
「あ、あのっ」
「総悟、お前な・・・」
つい適当な返事をしてしまったのだが、それを真に受けた二人は私を無視して話をし始める。
違うと説明しようと声をあげるも、二人は全く聞く耳を持たないので、見つめることしかできなかった。
黙って見ていると面白いもので、あーでもないこーでもないと否定する土方さんを、沖田くんがあの手この手で言いくるめるというパターンが見えてきた。
思わず微笑みかけたが、二人の本心はどうなんだろう? 土方さんは信じていないようだが、沖田くんはどっち?
信じているようにも見えないことはないが、単に土方さんをからかって……いや、彼と同じ意見だと言うのを隠したいだけにも見える。
あれ? 今二人は「私が未来から来た」という話について論議している。未来から来たなんて普通は簡単に信じられないだろう。
そこに私が「違う世界から来た」なんて爆弾を放ったら……。
更に疑われること間違いなしだ。
二人から見たこの状況で突然意見を変えるのもおかしいし、何より彼らにとって、未来はほぼ確実に存在するけれど、別世界は存在するのかもわからないのだから。
それならいっそ、未来から来たことは否定せず流してしまおうか。……うん、そうしよう。面倒だし。
ちなみにその後すぐ、そんな私の思考も、二人の水掛け論と化しつつある言い合いも、私の大きなあくびで一旦停止することとなる。