トリップしちゃった系女子です
□1初めまして、知ってる人達
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万事屋だとわかっても、どうすべきかわからない私は、ここを出ることにした。帰れるかもと期待して触れたテレビは固かった。
何でも屋である銀さん達に助けてもらおうかとも考えたが、私自身この状況を理解できていないのだから、今は見つかるわけにはいかない。
……もしもすぐに帰れなくて、しばらくこっちに滞在することになったら、会ってみたい。本当にここが私の知る世界なのかも確証がないが。あ、全然関係のない銀魂ファンの家だったりしたら言い訳のしようがないなぁ、これ。
「お邪魔しました……」
名残惜しさを感じつつ、私は万事屋(らしき場所)を後にした。靴はないから、裸足で。
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舗装されていない道を歩きながら、私は途方にくれていた。
店を出てはみたが、これからどうしよう。さっき見た時計は4時半をさしていたから、暗くなり、気温も下がっていくだろう。早く帰らなきゃ……。
でも、どうやって?
これまで歩いていて、わかったことがある。
まず、ここはほぼ確実に予想していた世界だと言うこと。町並みも道行く人の服装も、まさにそれ。白いワンピースに、長い黒髪を揺らして歩く私は浮いていたらしく、すれ違う人たちに2度見3度見された。
そして、これが夢の可能性は低いということ。正確な時間はわからないが、恐らく一時間以上も裸足で歩いているので、いい加減足がじんじんと痛むのだ。
「おい、止まれ」
不意に、後ろから声をかけられ左肩を掴まれた。立ち止まり、何の気なしに振り向くと、煙草をくわえて怖い目をした、恐ろしい……鬼がいた。
鬼は私を見るなり、ガキじゃねえかと呟き、肩から手を離した。
「住民から通報があった。靴もはかずに歩いてる変な格好の女がいるってな。この場でいいから身分を証明するもん出せ」
まずい、そんなもの持ってない。……いや、持っていたとしても学生証なんてここでは意味をなさないか。ならば取る手段はひとつしかない。
「あっ待てコラァ!!!」
逃げるしかないだろう! 鬼の副長の名は決して話を盛っている訳ではなかったようで、目を見られただけで何も言えなくなった。
まぁ、裸足の私と靴を履いた鬼ごっこのプロフェッショナルとでは、勝負の結果は決まっていたわけだが。