◆Tudors◆
□第二章:聖夜
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「今日は何をしていたのだ」
そんな中、ヘンリーはジェーンに尋ねる。
「今朝は侍女を連れて城の外を散歩しておりました」
「散歩…、あまり無茶をするな。子どもの為にも」
ジェーンの頬を擦りながらヘンリーはそう告げた。
「はい陛下。しかし偶には外の空気を吸うのも子どもの為かと思いまして」
「それもそうだな」
軽く口づけをする夫婦を誰もが微笑ましく見つめる。
その光景をリナもエドワードも見つめていた。
「幸せそうな夫婦」
そう呟くリナにエドワードは咳払いした。
「用がないなら、いいか」
傍を離れようとするエドワードにリナは思わず声を掛けた。
「一緒に踊って貰えませんか?」
その言葉にエドワードは驚いていた。
「私が?」
尋ねるエドワードにリナは頷いたが、エドワードは面倒だと言わんばかりに当たりを見渡した。すると妻であるキャサリンと目があった。
そして
「まぁいいだろう」と答えリナの手を強引に取り中央に向かった。
周りのカップルたちと踊りを合わせ密着する2人だったが、リナは目を細めた。
「奥様がこちらを見ていらっしゃいますが」
「別に構わんだろう」
無表情で答えるエドワードにリナは意味あり気に「ふ〜ん」と頷いた。
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翌朝、機嫌良さそうに宮中を歩いているリナの隣りにエドワードの妻が現れ同じように歩く。
「御機嫌よう」
「伯爵夫人、お早うございます」
驚いたリナは足を止め頭を下げた。
「昨夜、主人と楽しそうだったわね」
その言葉にリナは察しがついた。
「ええ、シーモア様には良くしていただきましたことをお言葉にしたまでです」
「それ以上に見えたのは錯覚だったのかしら。馬鹿な小娘が人の夫に恋焦がれてみなさい。地獄へ堕ちる想いをするわよ」
「と言いますと?」
目を細め尋ねるリナにキャサリンは笑みを浮かべた。
「無駄よ。夫は愛のない人間。人を愛すことなど出来ない人間なの。それを知った上でつるむといいわ」
そう告げキャサリンはリナの元から去ると、リナは不服そうな顔を浮かべた。
そして王妃の部屋へと向かうと何やら騒がしいことに気が付いた。
「何かありました?」
メアリーに尋ねるとメアリーは渋った表情を浮かべた。
「先程耳にした情報で、王妃様のお父上が亡くなったと。それも1週間も前に」
「何故今になって?」
驚くリナにメアリーは首を振った。
「それを先程お兄様であられるハートフォード伯爵から聞かされたようです」
エドワードのしそうな事だとリナは思った。
ジェーンの知らない間に葬式もすでに終わらせていた。
「時期が悪かったそうで、今まで話せなかったと聞きましたが。どのタイミングでも辛い話です」
とメアリーは寂しそうな表情を浮かべた。
そんな所に涙を拭いたジェーンがこちらに歩いてくるのが見え急いでリナとメアリーは頭を下げた。
「王妃様」
「こんな見苦しい姿を見せてしまってごめんなさい。リナ少し宜しいかしら」
「はい王妃様」
頭を深く下げリナは王妃の元へと近づくとジェーンは真剣な眼差しで目の前の少女を見つめた。
「貴女こちらに来てからお父上に文を出しました?」
「いえ…」
思いもよらぬ問いにリナは渋った。
「私は後悔しているの。少しでも父上との思い出を作りたかったって」
「……」
「だから、貴女も一言でもいいの。お父上に文を差し出しなさい」
「はい王妃様…」