◆Tudors◆
□第二章:聖夜
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イングランドにもクリスマスが到来していた。
銀色の世界が城までも覆い、酷な現実を紛らわすように雪は美しく世界を覆った。
−第二章−
ジェーンは侍女たちを引き連れ城の外へと向かった。
誰もが「体を壊す」と腹の子を心配していたが、ジェーンは大丈夫だと言い張った。
メアリーとリナと共に城の外を歩いているとジェーンは世界の美しさを感じ取っていた。
「今夜の宴に貴女達のドレスを用意させました」
するとジェーンは2人にそう告げた。
「私たちに?」
メアリーは笑顔で尋ね返すとジェーンは微笑んで頷いた。
「貴女達はまだ若いですし、素敵なドレスを纏い社交の場に出たいのだと思ったの」
と告げるジェーンに2人は頭を下げた。
「ありがとうございます王妃様。私共に何か出来る事がありましたら何なりと」
リナの言葉にジェーンは微笑んだ。
「なら、貴女に踊りを教えていただきたいと思っているのよ」
「私にですか?」
「ええ」と綺麗な笑みを浮かべるジェーンにリナは心から喜んだ。
それからジェーンから送られたドレスに着替えリナは鏡を通し自分の姿を見つめた。
薄いピンクの品のあるドレスにリナは少し違和感があった。
そんなリナの元にジェーンが現れる。
「やはりこの色で正解だったわ。可愛らしい」
そう告げるジェーンにリナは頭を下げた。
「ありがとうございます。このような色を身に付けたことがありませんでしたのでとても新鮮です」
「こういう色もよく似合うわ」とジェーンはリナの髪を擦り、部屋を出て行った。
そして再びリナは鏡をもう一度見つめ、今度は微笑んだ。
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クリスマスの音楽が流れる広間に集った貴族たちの間をジェーン率いる侍女たちが通っていく。
そしてヘンリーの前に着くなり頭を下げた。
「陛下」
ジェーンの言葉にヘンリーは頷きジェーンを手招く姿を見て、侍女たちは自分たちの位置に着いた。
それから音楽に合わせ男女が一緒に踊っていた。
その光景を詰まらなそうにエドワードは見つめているとそこにリナが姿を現した。
「閣下」
リナの言葉にエドワードは目だけを向けた。
「何の用だ」
興味なさげに問うエドワードにリナは隣りに立った。
「まだ感謝の言葉を告げておりませんでしたから、こちらに連れてきてもらいありがとうございました」
「そんな事を言いに態々?」
意地悪な笑みを浮かべるエドワードにリナは頷いた。
「ええ、感謝しておりますし貴方と話すきっかけが欲しかったんです」
誘うような目を向けるリナにエドワードは鼻で笑った。
「宮廷で何て言われているか知ってるか?」
「はい?」
「魅力のない娼婦のような子どもだと言われているんだぞ。そんな奴と話すと思うか」
笑みを浮かべるエドワードだったが、その笑みはまるで悪魔のようだった。
しかし、リナには魅力的に思えた。
「そう言われていると思いました。踊り子と言えばそういった印象を持たれる、その覚悟があってこちらへ参りましたもの」
そう答えるリナにエドワードは漸く顔を向けた。
「まだ穢(けが)れの知らない体ですから」
小悪魔のような笑みを向けるリナに漸くエドワードも笑った。