■Hobbit■
□5、通じるもの
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「脱獄だ!」
エルフの声が聞こえベッドに横になっていたリナはハッと目を開ける。
いつか考えていた恐ろしいことが現実になってしまったと。
-5、通じるもの-
昼下がり少し冷えてきたビルボは家の中へと入った。
ティーカップを持つ自分の手がシワシワになっており、それが時の流れを実感させる。
あの時、彼女を置いて脱獄したことは今でも胸が痛む。
誰もが彼女を信頼していなかったのだ。
――――
知らせを聞かされたリナはベッドに腰を下ろし屍のように項垂れていた。
そんな彼女の元に不敵な笑みを浮かべたスランドゥイルが現れる。
「仲間はお前を置いて逃げたそうだ」
その言葉にリナは胸を締め付けられるようだった。
「端から信頼されていなかったようだな」
スランドゥイルの言葉は突き刺さるようでリナの心を蝕んで行くよう。
何も答えられずリナが俯いているとスランドゥイルはそっと囁いた。
「あの者たちを捕らえることができれば、エルフとしてそなたを迎えよう」
その言葉にリナは顔を上げスランドゥイルの顔を見つめ、スランドゥイルの眼差しに捕らわれた。
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闇の森から脱出した一行ははなれ山へと向かっていた。
そんな中、ビルボは納得していなかった。
「やっぱりリナが心残りだな…」
そう呟くもトーリンは鼻で笑う。
「これが正しかった」
彼の言葉に何か突っかかるようでビルボは来た道を見つめた。
――――
あの日、口で言うことは容易かった。
だが行動に出る事の難しさを身を持って感じさせられた。
ビルボは沈んで行く夕日を眺めながら胸に手を置く。
誰かが信じていれば、いずれ報われる。
そんなのは口だけだと。