▼Avengers▼
□2. 素性
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ニューヨーク・マンハッタンの渋滞状況は相変わらずで、タクシーを捕まえられたらそれは幸運なことだ。
ハルクことブルースは久々の都会での生き方の難しさを思い知っていると一台の真っ赤に染まったオープンカーが目の前に停まった。
「やぁ、君が噂の超人かね?」
一丁前のサングラスを掛けた車の男にブルースは不敵に笑い手を差し出すと男は笑みを浮かべ彼の手を受け取った。
「君がアイアンマンだね」
笑い合う2人の男は意気投合し車を走らせる。
「実はね、君の他にもう1人拾えって言われていてね」
そう話すトニーにブルースは首を傾げた。
騒がしい地下鉄のホームを歩きながら棒付きキャンディを咥え昔から愛用しているオリーブ色のMA-1ジャケットを羽織った女は長い階段を軽々と乗り越え外に出るとその勢いで車道に出た。
凄まじい速さで走る車を目の前にして女はニヤリと笑みを浮かべる。
「前に人が…!!」
気配を感じ取ったブルースは咄嗟にハンドルを切るとトニーは急いでブレーキを掛けた。
ギリギリで停まった車を見て女は満足そうに笑い手のひらを見せた。
「ナイスタイミング」
そして車の後ろの席に乗り込む女にブルースは振り返り笑みを見せるが、それはどこか怒りを感じさせた。
「どうやら君は命拾いしたようだ」
そんな彼に女は不敵に笑う。
「計算通りだったし、死ぬつもりはなかった」
肩を竦める女にブルースは首を横に振る。
「その事じゃない。もしもう1人の僕が目を覚ましてしまったら…」
「ああ、その事」
納得すると女は再び肩を竦めながら溜息を吐く。
「それでさっき言っていたもう1人っていうのが彼女だ」
嫌悪な空気が流れる中、トニーは平然とことの説明をし始めると女は笑いながらトニーのサングラスに手を伸ばす。
「いいサングラス。レイバンの?」
「違う。グッチだ」
仲良く話し始める2人にブルースは呆れていたが、それに気が付いたトニーが助手席に顔を向ける。
「彼女はリナ・ギルバートだ。君でも名前くらいは聞いたことがあるだろ?」
トニーの紹介を受けブルースはもう一度振り返りリナの顔を見ると、彼女はトニーのサングラスを掛けたまま笑みを浮かべる。
「ハイ」
「君とは仲良くなれそうだ」
手を差し出すブルースにリナは彼の手を握った。軽く握手を結ぶとトニーは再び車を走らせた。