▽X-MAN▽
□3. 新たな心境
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翌日、リナの朝は早かった。
だだっ広い中庭に置かれたテラスに1人で座りながら温かい紅茶を飲み長年住んできた屋敷を見つめていた。
「物思いに耽っているな」
そんな彼女の隣に腰を下ろしたのはエリックだった。
「…子供を手放す母親の気分ってこんな感じなのかな」
「それは随分と大きな子供がいたもんだ」
屋敷を見つめながら笑うエリックの横顔を見つめながらリナも微笑んだ。
「不思議。貴方といるとネガティブな考えが吹き飛んじゃう」
「イギリス人は何かとシリアスに考えがちだ」
文化の違いだ、と答えるエリックにリナは納得したように頷いた。
「それで貴方達は私を賭けたみたいだけど?」
口角を上げ何を考えているのか読めない笑みを浮かべる彼女にエリックは肩を竦めた。
「ああ、彼の勝ちだ」
少しだけ不機嫌になるエリックを見てリナは目を細める。
「全く…女に対して賭け事をするなんて、アメリカ人って野蛮。私、これからやっていけるか不安」
はぁ、と溜息を吐く彼女を習慣のようにティーカップを口に付けようとすると口元が急に寂しくなる。気になった彼女は視線を向けると目の前で宙に浮くティーカップに思わず鼻で笑い隣に座っているエリックに顔を向けると彼の勝ち誇った表情が目に入る。
「それでもここに居るよりかはマシなはずだ」
宙に浮いたティーカップを動かしエリックは掴み取ると何やら企んだ笑みを浮かべたかと思うと急に彼女にかけた。
「ちょっ…!」
びっくりするリナは素早く立ち上がり呆れたようにエリックを見つめたが、すぐに笑いティーポットを手に取り蓋を開けると彼に全部ぶちまけた。
「やったな…!」
エリックは唖然としながら彼女を見つめ、そしてニッと大きな口を開け笑う。
静かな朝方だったが、彼らの笑い声が賑やかにさせた。
自室の窓から追いかけっこをするエリックとリナを見つめチャールズも嬉しさから笑みが溢れた。
「随分とびしょ濡れになったね」
メイドたちが運んできた朝食を頬張りながら2人を見つめるチャールズはどこか落ち着いていた。
「楽しそうで何より」と付け足しブレッドにバターを塗る彼を軽く睨みつけながらリナは椅子に掛かっているレザージャケットを羽織る。
「これから野蛮なアメリカに行くのね…。ああ恐ろしい」
袖に腕を通しながら愚痴を零すリナにチャールズは苦笑いを浮かべていた。
「野蛮な君を受け入れる国だ。きっと気にいるさ」冗談混じりのチャールズの言葉に彼女ははうっすら笑みを浮かべ目を閉ざす。
「それもそうね」