▽X-MAN▽

□1.運命の歯車
1ページ/14ページ


キャンドルに灯された火を眺めながらエリックはステンレスのカップを手に取り、ぬるくなった紅茶を一気に飲み干した。

込み上げてくる想いを何とか鎮ませ、ひと息吐く。

その瞬間、風に煽られてか炎が揺れると自分の感情と重ね合わせた。

あの日のことを昨日のように思い出されると、エリックは再び息を吐いた。







ある日の夜、怒りに塗れたエリックはある決意を胸に抱き海へと向かっていた。憎きショウのアジトを突き止めたからだ。

目の前で親を殺され、そして自分の人生が狂い始めた。そう思い続けエリックの復讐心は燃え上がる。

ショウ率いるヘルファイヤークラブが乗る船を目の前にエリックの目付きが変わっていき、身軽に船に乗り込んだ。


その頃だった。

CIAの船がヘルファイヤークラブの船に攻撃を仕掛けた。

思わぬ揺れにエリックは体勢を崩し、その隙を見たショウが彼を船から突き落としたのだ。

幸い海に落ちたエリックは顔を歪ませていたが、事の自体を把握しようとしていた。

ヘルファイヤークラブの船に次から次へと砲撃する船が何隻も見えたが、それも一瞬にして消えた。

ヘルファイヤークラブの一員であるリップタイドが引き起こした竜巻により船はどんどんと沈んでいったのだ。

それを見ていたエリックはやはり“あの男”を倒すのは自分しかいない、そう気付かされた。

ヘルファイヤークラブの船は潜水艦となり海の中へどんどんと沈んでいくと、エリックは手のひらを向ける。

すると彼の体は潜水艦と合わせて動き始め、そのまま海の中へと引きずりこまれていった。

水圧も息苦しさも気にもならなかったが、急に体が締め上げられ異変に気がつく。

《このままじゃ君は溺れる》

ふと頭の中に声が聞こえてきてエリックは振り返ると見知らぬ顔が見えた。

この男は邪魔をするために現れたのか、そう考えるとエリックは男の腕を振り払うも男は頑なに離そうとしなかった。そして再びエリックの脳内に声が聞こえてくる。

《安心しろ。僕は君の敵じゃない》

しかしエリックは手のひら向けたまま男と共に海に沈んでいくと男も危険を感じたのか腕の力が強くなる。

《君は溺れ死ぬ気か!?》

その言葉にエリックは物事を把握し、漸く動きを止めると男と共に水面に上がった。

「やっと…言うことを聞いてくれたか」

苦笑いを浮かべる男に対しエリックは未だに不信感を抱く。

「声が…聞こえた」

そう話すと男は不敵に笑い何も答えなかった。

助けに来たボートに乗ったエリックは目の前の男に目を向けていると、男は微笑み手を差し出した。

「僕はチャールズ・エグゼビア。宜しくエリック」

「脳内に声が聞こえたのは偶然ではなさそうだ」

するとチャールズの手を見つめながらエリックは笑う。

「その通り」

チャールズは手をしまうとエリックは恥ずかしそうに顔を俯かせた。

「俺だけだと思っていた」

「それで…?まだ助けてあげたお礼を聞いていないけど」

企んだ笑みを浮かべるチャールズにエリックは呆れたため息を吐く。

「誰も助けなど求めていなかった」

そう答えるとチャールズは勝ち誇った顔を浮かべたまま何も答えずにいた。

「お前が邪魔をしなければ、シュミットを葬れた」

「無理だよ。あのままでは、君は潜水艦の重みに引かれて溺れていた」

「例えそうだとしても、シュミットを消せれば俺はそれでよかった。ようやく居場所を突き止めたのに、また振り出しだ。…どうしてくれる」

「手伝うよ。僕とCIAが」

あれがエリックの運命を変える言葉だとはあの頃は想像も付かなかった。

「CIAだと?そんなものと関わり合うなんてごめんだ」

「もう遅いけど」

笑うチャールズの後ろにCIAの文字が書かれたジャンバーを着た女が立っていた。

「それもそうだな」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ