□Harry Potter:Lupin□

□5、勇気
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ある日の昼下がり、ルーピンは気に喰わなそうにリナの横顔を見つめていた。

シリウスと楽しげに話すリナを見てため息を吐く。

そんな彼に気が付いたジェームズは笑っていた。

「何だよ、そんなしかめっ面して」

「え?」

驚くルーピンにリナもシリウスも顔を向けた。

「何か気に喰わないことでもあったのか?」

シリウスの問いにリナも笑いながら見つめてくる姿にルーピンは呆れながらその場を離れた。

「きっと私たちに嫉妬でもしてるんだろ」

そう笑って話すシリウスにリナは胸がざわついた。

さっさと行ってしまう彼の後を追い掛けるリナはようやくルーピンに追いついた。

「ちょっと、とっとこ行かないでよ」

息を切らせながら声を掛けるリナにルーピンは目を瞑りながら振り返る。

「何か私怒らせるような事した?」

「別に?」

そう言い去ろうとするルーピンの前に駆ける。

「話はまだ終わってない」

「というよりも話すらしていない」

理屈なルーピンにリナは腕を組み彼を睨んだ。

「わかった…」

そんな彼女を見てルーピンは敵わないと肩を竦めため息を吐くと廊下の壁に寄り掛かった。

「いつも気になっていたんだ。どうしてシリウス達は名前で呼ぶのに、私だけは苗字で呼ぶんだ?」

「…」

思わぬ彼の台詞にリナは目をぱちくりとさせながら、同じように壁に寄り掛かる。

「そんなに距離を置きたいか?」

「そうじゃない」

そして微笑みながらリナは俯いた。

「だって私達の出会いって、そう単純じゃなかったから」

そう話すリナにルーピンは首を傾げた。

「どんな出会い方だったんだ?」

「それは…、貴方は学校の先生で私はその生徒だったから。名前で呼ぶのって怪しくない?」

「私が教師に?」

その事実の方が驚いているルーピンにリナは目を細める。

「立派な先生をやってたよ?生徒皆に好かれる先生だった」

「未来が分かるって楽しいな」

ニヤけるルーピンだったがすぐに疑問が浮かぶ。

「なら何故シリウスは名前で呼ぶんだ?」

「彼は変わらない人懐っこさがあって。会った当初から名前で呼んでたな」

思い返す彼女にルーピンは確かに、と笑っていた。

「今は対等な立場だ」

そしてそう付け足すルーピンにリナは不敵に笑う。

「下の名前で呼んでほしい?」

「友達だろ?」

笑い返すルーピンにリナは考える素振を見せると、ひとつ条件を出した。

「ならジェームズたちのスネイプに対するいじめを止めて」

「え?」

耳を疑うかのようなルーピンにリナは腕を組む。

「偶にやり過ぎる時あるじゃない。見てられないのよ」

肩を竦ませるリナにルーピンは顔を顰めさせた。

「だが友達に言えないだろ?いじめを止めろなんて」

「友達だからこそ言えるんじゃないの?それとも上辺だけの友達なの?」

「そうじゃない。ただ、人狼で苦しむ私を助けてくれているのは彼らだ。だから…」

「本音を言ってあげた方が恩返しになると思うよ」

しっかりと捉える彼女の眼差しにルーピンは考えていた。

そんな彼にリナは不敵に笑いながら手を振る。

「じゃあ頑張って。“ルーピン”」

そして去っていく彼女の後ろ姿を見つめ、ルーピンは深くため息を吐いた。
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