□Harry Potter:Lupin□
□4、手段
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人狼たちは唸りながらも2人にどんどんと近づいてくるが、その時リナはハッと気が付いた。
何故、彼らは人狼の姿になっているのかと。
そして夜空に目を向けるとそれに気が付いたルーピンも同じように月に目を向けた。
満月の光りがルーピンの眼差しを染める。
ドクンと跳ね上がる鼓動にルーピンは息苦しくなり、身を縮み込ませる。
その頃シリウスは寮から外を眺めるとまん丸い月に目が留まり思わず近くに居たジェームズに目を向けた。
「なぁ!今夜は満月だったか!?」
その問いにジェームズも顔を上げた。
「リーマスの身が危ない!」
2人は駆けあがりスリザリンの寮へと向かった。
するとそこには笑みを浮かべるコスナーの姿を見てシリウスは咄嗟に胸ぐらを掴んだ。
「おい!リーマスを見なかったか!?」
焦るシリウスにコスナーは手を上げ笑っていた。
「ああ、あいつか?あの怪しげな女と楽しくやってたさ。今は森で続きでもしてるんじゃないのか?」
ププと吹き出すコスナーにシリウスは血の気が引くような思いを抱き、ジェームズと共に外へ駆け出した。
「あいつも見掛けに寄らず男だったぞ!」
2人に声を掛けるコスナーは満足そうに微笑んでいた。
:
「見ちゃ駄目!」
思わず彼の体を抱きしめたリナだったが、次の瞬間嫌な予感がした。
顔を上げる彼の瞳は獣の目つきだったからだ。
「ッ!」
投げ飛ばされるリナは地面に倒れ伏し、咄嗟に顔を上げた。
そして自分に襲い掛かろうとするルーピンに目を瞑った瞬間、獣の争いの音が耳元で聞こえた。
ゆっくりと目を開けるリナはハッとした。
大型犬が目の前に立っており、ルーピンに歯を剥けていた。シリウスに違いないと気が付き胸がざわついた。
「リナ!逃げるぞ!」
するとジェームズに腕を掴まれ立ち上がると共に駆けだした。
そして再び動物もどきを習得していない自分の無力さを思い知り唇を噛みしめた。
駆けあがる2人はホグワーツへ向かおうとした時だった。
ニヤリ
不敵に笑う獣のような顔つきの男と目があった。
フェンリール・グレイバック
聞いたことのある名だ。
リナはすぐに杖を構えるもグレイバックの鋭い歯が目の前に見えた。
カチンと歯が鳴る音が聞こえジェームズは必死にリナの腕を引っ張るとその拍子に2人は後ろに倒れ込んだ。
すると地面に放り出された鍵が目の前にあるとリナは気が付き這い上がりながらも手を伸ばそうとした。
しかし、グレイバックは彼女の腕を踏みつぶし怯んだリナを見てゆっくりと鍵を拾った。
「お願い…やめてっ」
涙ぐむリナにグレイバックは容赦ない笑みを浮かべると鍵を口に運んだ。
そして
嫌な音が聞こえたかと思うと真っ二つに折れた鍵が地面に堕ちていった。
「ッ…!」
血の気の引いたリナは鍵を見つめたまま身を震わせた。
そんな彼女を見たジェームズは再び彼女の腕を取り立ち上がると辺りを見渡す。
グレイバック率いる3匹の人狼らが一斉に襲い掛かりジェームズは彼女の体を抱きしめた。
しかし
獣の鳴き叫ぶ声が頭上に響きジェームズとリナは目を開けるともう1匹の人狼が3匹を相手に戦っていた。
それはきっとルーピンだと感じられた。
人狼らがルーピンに意識が行っている間リナはジェームズと共に怪我をしているシリウスの元へと向かった。
「今のうちだ!」
ジェームズとリナはシリウスの腕を首に掛けその場を離れようとしたが背後から獣の声が聞こえリナは髪を掴まれ背後に倒れ込んだ。
「ッ…」
地面に頭を打ち付け怯んだリナをシリウスが助けようとするもグレイバックが腕を振り上げシリウスの体は弾き飛ばされた。
凄まじい速さでグレイバックは目の前にいるリナの首筋に噛みつこうとしたが、ルーピンが阻む。
獣らの戦いを見守るしかないと感じたリナだったが、目の前にトラ猫が姿を現しグレイバックを襲うとグレイバックはしっぽを巻いて姿をくらました。
その姿を見て他の人狼らも逃げていった。
リナは辺りを見渡すともがき苦しむルーピンの姿が見えた。
そしてみるみる人間の姿に戻るも、彼は身を丸め込んだまま顔を地面にくっ付けていた。
「これは一体何事です!」
トラ猫は姿を変えマクゴナガルの声が聞こえてくるとルーピンは顔を歪ませリナを見つめた。
「リナっ!」
眉を寄せ今にも後悔で死んでしまいそうな顔色のルーピンを見てリナも思わず涙が零れた。
「…ッ」
リナは震える体を起こしゆっくりと歩き出すとルーピンは手を差し伸べたが、彼女はそのまま彼を通り過ぎマクゴナガルの元へと早歩きで向かった。
「ミス・ギルバート…」
思わず彼女の体を抱きしめるマクゴナガルは3人の青年に目配しし頷いた。
「一先ず寮へお戻りなさい。ここは危険です」
そう命を下すとシリウスとジェームズはルーピンの腕を取りホグワーツへと帰って行った。