□Harry Potter:Lupin□

□3、事実
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ルーピンは禁じられた森へと向かっている車の中で、ある昼下がりのことを思い出していた。

そう、あれは豪雨で雷が鳴り響き外にも出られないほどの悪天候だった。

その日はブラック邸で久しぶりに魔法を教える楽しさをルーピンは感じていた。

そして何でも器用に熟してしまうこの優等生を何としてでもホグワーツに帰せないものかと考えていた。





先程からルーピンの視線を感じリナは苦笑しながらも彼の顔を見つめ返す。

「私に何か用?“先生”」

わざとらしい彼女の言葉にルーピンはフッと笑う。

「嬉しいな、まだ私をそう呼んでくれる“生徒”が居たとは」

「ならホグワーツに戻ればいいのに。まぁ無理な話なんだろうけど」

肩を竦ませるリナはソファーで横になりながら本に目を戻すと、彼女の足元にルーピンは腰を下ろす。

「君はきっと偉大な魔女になる」

ルーピンの声にリナは目を向けては細めた。

「そう褒められると怪しい」

「ホグワーツでも成績は上位にいた。自分でも気が付いているだろう?」

覗き込むようにルーピンは顔を近づけると、リナは呆れ溜息を吐く。

そして体を起こしルーピンの鼻先に触れそうな距離まで顔を近づかせた。

「ホグワーツに戻れって言いたいの?」

怪しげな眼差しで目の前の男に問いかけると、ルーピンはすぐさま顔を逸らす。

「…やれやれ」

頭を振りながら腰を上げ、彼女から距離を取るとリナは不敵に笑う。

「“先生”もホグワーツに戻るなら、いいよ」

ルーピンの前に立ちリナは髪の毛を弄って見せては彼の反応を伺う。

「そうやって自分の将来を無下にするつもりなら、私はこれ以上助言はできない」

「ヴォルデモートが復活した今、将来を考える方が馬鹿げてる」

「確かに君は先を見通す力が長けている。だが、その力を過信しすぎて道を踏み外すことになるぞ」

「へぇ…」彼の言葉に突っかかるもリナは冷静さを保つように腕を組む。

「ヴォルデモートに立つ向かうためにも賢くならなくてはならない」

「ホグワーツに戻れば長生きできるとでも?」

納得のいかないリナは段々と苛立ちを覚える。

「そう言いきれるわけではない。だが、その分得られるものがあるはずだよ」

優しく声を掛けるルーピンにリナは目を伏せた。

「私に必要なのは学校じゃない」

悲しげな彼女の顔を見つめ、ルーピンは胸が痛み心配そうに顔を覗かせる。すると笑みを浮かべた彼女の顔に思わずため息が零れた。

「全く君と言う子は…」

言葉につっかえる彼にリナは得意気に笑う。その姿はまさに女狐のようだった。

「生きる術は十分に知っている」そう言いリナは彼の前から姿を消した。
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