□Harry Potter:Lupin□
□2、昔々
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妙な3人の共同生活が始まって間もない頃だった。
昨夜からルーピンの姿が見えなかった。
リナは彼に何か不快な事をしてしまったのか、とシリウスに尋ねると彼は笑った。
「何?あいつはそんな奴じゃないさ」
「じゃあどこに行っちゃったわけ?」
見当のつかないリナは勿体ぶるシリウスに苛立ちながら尋ねる。
「偶には1人にさせてやってもいいじゃないか」
いつもの調子のシリウスにリナはムッとするも、それ以上は答えないだろうと考え口を瞑んだ。
すると、タイミングよく扉が開いた。
「姫さんがお待ちかねだったぞ」
シリウスの言葉にリナは舌打ちをするもシリウスは面白がっていた。
「まぁ何事もなく帰ってきたわけだし」
肩を竦ませるリナにルーピンは笑いながらリビングの席に着いた。
「こいつは昔っから1人になる習慣があったんだ。なぁ、ムーニー」とシリウスはルーピンの肩に手を置きながら笑っている。
「そういえば、昔の2人のことって知らないかも」
ポテトフライを摘まみながらリナは口を開くとルーピンは少し寂しそうに微笑んだ。
「何、あんな昔の事」
そんな彼の顔を見てリナとシリウスは顔を見合わせた。
「私が人狼であることは知っているだろう?」
「まぁ、あの晩私も居たし」
シリウスとの初対面もあの晩だったとリナは思い返した。
「あの時は私でさえ死を覚悟したな」シリウスは思い出し笑っていたが、本音だった。
「人狼にしかわかない苦労というものがあるのさ」とルーピンは笑って答えた。
「だが、その苦労を仲間と共に乗り越えただろう」
シリウスの言葉にルーピンは頷きながら微笑む。
「何そのゲイっぽいノリ。私も混ぜてよ」
興味津々に覗き込むリナにルーピンは手で払った。
「そんな軽いノリではない」
そう言いながらルーピンは昔話を始めた。
「あの満月の夜だった。まぁ皆には薄々バレていたことは知っていた」
「そりゃ満月の夜の時だけ、姿をくらませば何か怪しいと思うのは普通のことだろう」とシリウスが答える。
「叫びの屋敷で変身を遂げていたんだが、いつも独りだった」
「独り“だった”?」
ルーピンの口調に気が付いたリナが首を傾げているとシリウスは頷いた。
「我々は動物の姿であれば襲われないと気が付いてだな」
「私の為に動物もどきを数年で習得してくれたんだ」と嬉しそうに話すルーピンにリナは不敵に笑いポテトを頬張った。
「泣ける話」
「話はこの辺で終わりにしよう」とルーピンは立ち上がり自室へと向かっていくとリナはシリウスの顔をまじまじと見つめた。
「ねぇねぇ、もっと学生の頃の話をしてよ」
「特に話すような内容はないが…」とシリウスは顎に手を置きながら思い返した。
すると
「2人はどんな学生だったの?」
「どんなって優等生だったぞ」
「嘘ばっか」
リナは呆れながらシリウスの肩を叩く。
「きっとあの中にリナも居たらもっと楽しくなっただろうな」
「え、そう思う?」
シリウスの意外な言葉にリナの表情が明るくなると彼は舌を出して笑った。