黒子のバスケ

□嫉妬
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走って走って、何処を目指すわけでもなくただ走った。
瞼の裏に残ったあの光景を消したくて…。

ドンッ!
『あ……』

「あっぶね!」


前を見ていなかったせいか誰かとぶつかってしまい、倒れる!と思って目をつぶった。
が、いっこうに衝撃は来ず、目を開けると…


「おい、大丈夫か?名字」

『…笠…松先輩…』

「どうしたんだよ、そんなに走って…」

『…な、なんでも……ない…です』

「………バーカ。なんでもないって顔してねぇよ」


そう言われてやっと自分が泣いているのだと気付いた。


『……先輩、私……黄瀬君に嫌われたかもしれない……』

「はぁ?」

『見たんです…さっき…黄瀬君が中庭で女の子と抱き合ってるとこ……。
………しょうがないですよね。あの子可愛かったし……私なんかよりお似合いで……』

「名字、お前何言って…」

『わかってたんです。私なんか黄瀬君には不釣り合いだって…。
本当は黄瀬君、私の事をなんて…』

「名字!」

『……っ!』

「はぁ〜……何やってんだよアイツ…。
あのなぁ、黄瀬が好きでもない奴と付き合うと思うか?
アイツは俺達にうぜぇくらいノロケるほどお前の事が好きなんだ。
だから自分の事"なんか"なんて言ってんじゃねぇよ。
その女の事は……本人に聞けよ」

『ぇ……?』

「名前っち!!」

『黄瀬君…』

「名前っち、なんで泣いて…」

「このボケ!自分の彼女、不安にさせてんじゃねぇよ!!」


ドカッ!


「痛いっスよ、センパイ〜…。それに不安って…」

「見たんだと。お前と中庭の女」

「え…」

「………ちゃんと説明しとけよ」


そう言って笠松先輩は行ってしまった。
重たい沈黙……。
破ったのは黄瀬君だった。


「あのさ、名前っち…さっきのは『いいの!』……へ?」

『別に気にしなくていいの…。
さっきの子と付き合う…んでしょ?私は別に…「違う!」

「違うっスよ!
あれはあの子が抱き締めてくれたら諦めるって…
してくれなかったら名前っちに何するかわからないって言われて…それで…」

『……そんな嘘つかなくていいよ?』

「嘘じゃないっス!」

『だって……だってキス……してた…』

「あれは向こうが勝手に…!」

『もういい!
私の事を好きじゃなくなったんでしょ?!
だったらそう言ってよ!!…邪魔ならそう言って…』

「……っ」


──ギュッ
『や、離して…!』

「邪魔なわけない!
好きじゃなくなるなんて…そんなこと絶対ないっス!!」

『…っ…』

「俺、名前っちのこと本当に好きなんスよ?
…それとも名前っちは俺のこともう好きじゃない?」

『そんなこと…!ただ……』

「ただ?」

『……私…可愛くないし…勉強も運動も全然……
私なんかじゃ黄瀬君に釣り合わない…』

「…名前っち、俺は釣り合う釣り合わないで選んだんじゃないっスよ?
俺はただ名前っちが好きで……大好きで…だから名前っちを選んだんスよ?
どんな子に告白されても俺には名前っちだけっス…」

『黄…瀬君…』

「それに名前っちは可愛いっス!
世界一可愛いっスよ?」

『なッ////』

「ねぇ…名前っちも俺を選んでくれるっスか?」

『………うんッ///』


END


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