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□RUN TO YOU
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女はいつでも強い訳ではない。


そう歌詞に書いてあった。
まさにその通りだと思うし、あの歌手が言うから説得力も割り増しだ。


そして今私は弱ってしまった。




家に誰もいないことがこんなに寂しいとは思いもよらなかった。

両親が出張なのは知っていたし、慣れている筈だった。
だったのに、

『なんでこんなに寂しいの…?』

リビングに入るなり涙がこみ上げでくる。


どうしたの。
ほら、泣かないでよ。


蛍がいたらきっとこう言うだろうな。
蛍。

一度顔を思い浮かべてしまったら寂しさが増して会いたいと思ってしまった。


電話してもいいかな。
でも、蛍だって疲れてるし。
重い女と思われてしまうのは絶対に嫌だ。


ケータイを見つめて立ち尽くす私に答えるように、ケータイが鳴り始めた

『うわぁ!?』
来ると思ってなかった着信に思わずケータイを落としそうになる。

『蛍からだ…』

何かあったのか、そんな事考える前に衝動で電話に出ていた。

『もしもし…?』

「ご両親、出張中なんだって?」


普段中々聞くことの出来ない優しい声に堪えていた涙が零れ落ちた。

やめてよ、なんで今なの。


「名無しさん?」
無言の私に疑問を抱いたのだろう、蛍の声はさらに優しくなった。


『…っ、あい…たい…っ』

とうとう嗚咽が漏れてしまった。

呆れたような溜息が聞こえた。
ああ、やっぱり重たかったんだ。

涙が更に溢れる。


「早く開けてくれない?」
寒いんだよね。

『へ…っ?』

突然のことで頭が追いつかない。
呆然としているとピンポーンとインターホンがなる。
その音は電話越しにも聞こえて、

衝動的にドアを開けた。



「なんで泣いてるのさ。」
制服のままの蛍がそこにいて、ケータイをおもむろに仕舞うとそのままの流れで腕を引かれた。

目の前は真っ暗で、体が宙に浮いているのが感じられる。

抱っこされてる…?

もも裏に回された腕はしっかりしていてブレることはない。
空いた手で胸に埋まる頭が優しく撫でられる。

『け、蛍!?』
「暴れないでよ。」

耳元で聞こえた声にピシリと固まる私を見て意地悪く笑った。

ドキンと心臓がはねる。

「いい子。」
ちゅ、と可愛い音が聞こえて、優しい笑顔がそこにあった。

「涙、止まったね。」

『おかげ様で。』

その首に腕を回し、肩に顔を埋めた。


『ありがと。』
「いいえ」


RUN TO YOU

(ところで、いきなり来ちゃったけど大丈夫だった?)
(むしろ感謝です。)
(んじゃ、寒いからお風呂入ろうか。一緒に。)
(帰れ)
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