致死夏期物語
□第一章《平凡な日常》
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【8/4 <月曜日>】
憂鬱になる朝。
時計が6:40を示し、起床を求めるアラームが鳴る。
少し身体を起こし、時計の上についてるボタンを押し、アラームを止めた。
もう朝か、なんてこの世の誰もが寝起きに思うであろう1フレーズが頭をよぎる。
そんな思考が、
私が…稲荷 咲が普通であると証明してくれた。
まだ寝たい衝動を抑え、上半身を布団から起こし、カーテン、そして窓を開く。
村という自然に囲まれ、地形からして盆地であるからか、
マイナスイオンと心地好い風が頬を伝い、いつも目を覚まさせてくれる。
これがいつも通りの朝。
涼しい風を充分に堪能した後、立ち上がり制服に着替えた。
階段を降りた先には、いつも通り母が食事を用意し、父が新聞を手にしながらもテレビを見ていた。
母が振り返り、「おはよう。」と一言言ったのが合図かのように、父も食事が用意されたテーブルにつく。
食事中に会話もなく、食べ終わると同時にすぐ席を離れ、学校へ行く準備。
7:20 私は母からのお弁当を受け取り、いつもの待ち合わせ場所に向かった。
家から300m位離れたバス停で友達を待つ。
学校から私の家までは2km位あった。
歩けない距離ではないのだが、どうせバスが通っているなら乗って楽したいのが人間。
私はバスでの通学を選んだのだ。
それにバス通学の人は少なく、ゆったりとできるし……
仲の良い友達がバス通学をしているからでもある。
待機用に設けられたベンチに座り、本を一冊取り出す。
「…だ〜れだぁっ!!」
急に後ろから視界を遮られる。
しかし、ほんのり甘い香り、声変わりしていないソプラノの声で正体はすぐに解った。
「あはは…おはよう、美香さん。」
正体がばれたと解ると覆っていてた手を外し、ピョコンと前に出てきた。
「おはよーなのですっ!まったく、咲には敵わないのですよぅ〜…」
可愛らしく苦笑いを見せる。
そんなことないよ、と小さく笑う。
一番敵わなくて、一番恐いのは他でもない、美香さんなんだから。
とは流石に言えなかったけれど…。