LYRICS


□鏡よ、鏡
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鏡はもっとも身近な魔法のアイテム
秘密の呪文はたった一言

『私は もっと 綺麗になれる』



鏡を見るのが憂鬱だった
地味で色黒、そばかすだらけ
可愛らしいとは程遠い
もっさり顔の自分がいる

一応女に見えるよう
髪を伸ばしているけれど
根暗な奴に見えぬよう
明るく振る舞ってはいるけれど
結局それも虚しい道化師(ピエロ)
心は疲れていくばかり

多くを望んでいるわけじゃない
ただ私も他の娘と同じように
『女の子』として扱ってほしいだけ



ある日、鏡を覗いたら
『私』が腕組みしながら悪態をついた
毎日毎日ため息ばかりで、ホントむかつく
ねえ、ほんの少しでも努力した?
最初から諦めているだけじゃないの?

まずはその髪を何とかしなさい
貞子じゃあるまいし
うざったいたらありゃしない
切っておしまい
ばっさり、すっきり、思いきり

カラーは少し明るめのブラウンで
毛先をゆるめにカールして
ほら、憧れていたふんわりガールのでき上がり



翌日、学校のクラスの前で
ドキドキしながら深呼吸
思いきって「おはよう」と声をかければ
皆の視線が一斉に集まる

「どうしたの? 一瞬わかんなかったよ」
「すっごい、イメチェン」
「びっくりしたー。でもいいよ、すごく可愛い」

半分はお世辞だろうけど
それでも何だかくすぐったくて
ニヤニヤ笑いが止まらない
初めてもらえた『可愛い』に
私はすっかり舞い上がった



そのおかげか、鏡を見るのが以前ほど苦じゃなくなってきた
毎日きちんと手入れを怠らなければ
結果はおのずと付いてくる

ごわごわタオルみたいだった肌も
今では剥き立てゆでたまご
色黒もさほど気にならない
むしろ健康的に見える不思議

何だか今ならどんなことでも
叶いそうな気がするよ



最近やたらと視線を感じる
振り向いた先にはいつも同じ人がいる

「ひょっとして、あんたに気があるんじゃない?」

女友達の冷やかしに、まさかと笑い飛ばしはするも
ひそかに期待している自分もいた
心臓、ただ今爆走中

そのまさかが現実に!
生まれて初めてできた『彼氏』に
気持ちはフワフワ、夢心地

お付き合いはとても楽しい
私をちゃんと『女の子』扱いしてくれる
それがすごく嬉しくて
もっと彼に相応しくなりたい
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