LYRICS


□午前零時にベルが鳴る
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明けない夜がないように醒めない夢もまたないのだと
思い知らされた
信号待ちのスクランブル交差点

私の隣にあなたがいたの
優しい声で電話に話しかけていた

まさかと自分の耳を疑ったわ
これではまるで安いドラマのご都合主義じゃない
どう考えたってあり得ない

それでも私は確信していた
だって、私があなたの声を聞き間違えるわけがない



昼の陽光(ひ)の下のあなたは、ごくごく普通のビジネスマン
蛇の執念深さも麻薬の危うさも感じない、至って真っ当な……ただの男

電話の相手は奥様? もうすぐ子供が産まれるんだ

全部こちらに筒抜けよ
誰かが聞き耳を立てているなんて、きっと思いもしないのね

自分だけは大丈夫と高をくくっているのなら、何てあなたは間抜けなの



恥辱にまみれた指を疼く芯に突き立てながら、歓喜と嫌悪の狭間でのたうつ苦しみを、あなた一方的に押しつけたくせに
自分はささやかな幸福に頬を緩ませて、いそいそと家路を急ぐ

急速に何もかもが色褪せていく

道端の石ころみたいに、どこにでもいるつまらない男
昨夜私の耳を汚したその唇が、今日は綺麗事の愛を紡いでいる

ねぇ、あなた
そんなふざけた裏切り行為が許されると思っているの?



午前零時にベルが鳴る
密やかな二人だけの儀式(セレモニー)
でも、あなたが何を仕掛けてこようと応える私はどこにもいない



縺れた回線がプツリと切れた
私とあなたを繋ぐ糸――切れてしまったの

もうあなたの言いなりにはならない、自分の好きに踊ってみせるわ
私は自由のマリオネット

……だけど、何かが足りないの
冷たい焔が今も体の奥で燻り続けている
回線が欲しいと喘いでる



午前零時にベルが鳴る
それが合図、新たな舞台(ステージ)の幕が上がる

罠を張るのはこの私、此度踊るのはあなたの方
ゆっくり、じっくりと――周到に

あなたを雁字搦めに抱きしめる



THE END


B.G.M.
Man on the Line by CHRIS de BURGH
Love on the Telephone by FOREIGNER
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