短編

□情報屋さんと勉強しました
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「へぇ懐かしいね」


仕事が一段落したのでテストの準備で数学を自主学習していると、ひょいっと教科書を持って行かれた。
「臨也さん、数学得意だったんですか?」
「んーまぁ普通だよ。好きでもないし嫌いでもないよ」
頭良さそうだもんな…きっといい成績だったんだろうなぁ…
「そういえば君、数学苦手だったっけ?」
「……臨也さんなら自分の成績知ってるでしょう…」
「人聞き悪いね。ちょっとした予想だよ。教えてあげようか?」
「え?いいんですか?」
「どうせ暇だしね」















というわけで、リビングで勉強をする事に。そして、なぜか臨也さんは伊達メガネをかけている…
「雰囲気でるでしょ?」
「まぁ出ますけど…」
普通に似合ってるし…てかフレームまで黒って…
「で、どれがわからないの?」
臨也さんの教え方はとてもわかりやすく、今までてこずっていた問題がすらすらと理解できるようになった。そして、集中して何時間か経った後…
「じゃあ、最後にテストをしようか?」
「テスト?」
「そ、ちゃんと問題を理解して、テストで解けるかどうかね。これは俺が問題集なんかを元に作ったプリント」
いつの間に作ったんだ…だか、問題何かは問題集みたいなしっかりとした、本当にありそうなプリントだ。
「全部で計算問題20問一つ二点、図形問題10問一つ二点、文章問題5問一つ八点の百点満点のプリント。途中式の点もあげるよ」
「本当のテストみたいですね…」
「もちろん赤点もあるよ。80点以下は認めないからね」
「っ!?はい!?」
50点がやっとな数学で80点以上って…そんなの無理に決まってる…確かに問題は理解したがそれが本当に一人でテストなんかで解けるかどうかわからないのに…
「んなっ!?」
「まぁ、罰ゲームじゃなくても俺は大歓迎だけど?」
「何言ってるんですか!!」
こ、これは…とらないと色々と危ない…臨也さんのことだから本気でやる…絶対やる…!
「制限時間は50分だよ。はい、始め」
「え?あ…!」
突如始まったテスト。だが、すらすらと解ける。やっぱり臨也さん教え方うまいな…何問かはわからないものもあったが、普段とは比べものにならないくらい解けている。答えはあってるかはわからないが公式は浮かんでくる。これならかなりの点数がとれそうだが80点以上の自信なんてない…
「あと一問…」
最後の文章問題…難しい…ダメだ…全く公式に当てはめられない…途中式すら書けない…あと、これだけなのに…どうしようか…
「はい、終了」
その言葉ともに、プリントが取り上げられた。
「あ!」
「採点だよ」
自分の前の席に座り、答らしいものも見ないで、採点を始めた。何だろ…ものすごく緊張する…これで80点以下だったらどうしたらいいんだ…
「さぁ、結果が出たよ」
「………何点ですか……?」
「点数はね……














80点…だね」












「……え?」
や、やった!!これで罰ゲームを受けなくて済む…
「言っとくけど、以下はその数字も含まれるよ」











「…………………へ?」











「つまりは80点も赤点」
あー…爽やかだ。これ以上にないくらいに爽やかだ。
「罰ゲーム決定」
「ま、まま待ってください…」
じりじりと四つん這いで寄ってくる臨也さんから逃げるために立ち上がろうとすると…
「行かせないよ」
グイッ
「うっあっ!」
いきなり腕を捕まれ、バランスを崩してソファーに倒れ込んでしまった。
「うわっぷ!」
「なーんで逃げるのかな?」
にこにことしながら上に乗りかかる臨也さん。
「臨也さんがそんな笑顔で来るからです!」
「ん?文面的には俺悪くないよね?」
「実際は文面じゃ表せません!」
「まぁまぁ、それじゃ…」





















「……っふ…んぅ…」
息が…上手くできない…何分経ったかわからない…も…無理…
「ふはっ…」
「まだ1分しか経ってないよ?」
臨也さんの罰ゲームは、《点数、つまり80の数の秒数分、自分からキスをし続けろ》と、無茶苦茶な内容だった。
「あと20秒どうするの?」
臨也さんが自分の顔を撫でながら、ニヤついていた。
「はぁ…はぁ…無理…です…」
頭が痺れる…
「それじゃあ罰ゲームにならないでしょ?」
まるで愛でるように髪や額に口づける。
「な…で…こんな…」
「これが一番、君にとって罰ゲームでしょ?俺は大歓迎だけどね」
「ん…」
首の付け根あたりを甘噛みされ、肩が上がった。それを見た臨也さんが再びニヤっとし、耳元で低く、囁いた。
「感じちゃった?」
「…っ」
くすぐったいような、変な感覚に戸惑った。
「どうしたの?」
「…耳…っ近くで喋るの…やめてください…」
「君って意外に敏感なんだね」
何度も首の付け根を甘噛みされ、朱い痕がついていく。何でこんなことに…声を出さないように唇を噛み締めた。
「あーダメだよ」
「ぇっ…むぐっ!?」
いきなり口にハンカチを突っ込まれた。
「傷作っちゃダメだよ。俺としては声出して欲しいけどね」
スルッ…そう言いながら臨也さんは自分のTシャツに手を忍ばせた。ひやりとした手の感触に身体がビクついた。
「…ふっ!」
「ん?手冷たかった?」
火照った体には刺激が強い…て言うか…何で罰ゲームからこんなことになってるんだ…
「身体熱いね…興奮してる?」
首を必死に振った。興奮してたまるか。
「嘘つきはダメだよ」
耳を甘噛みされながら、口からハンカチが出て行った。
「はっ…」
「ねぇ…











俺のこと好き?」











「…っは?」
いきなり、しかもこんな意識が定まっていないときに言われ、理解が出来なかった。
「言えたら、ご褒美あげるよ?」
何を…言ってるんだ…言えるわけがない…だが、今のこの状態で繰り返して言い聞かされると、催眠にかかったかのようにボーっとしてくる…











「俺のこと好きって…言って?」









好き…って…臨也さんを…?











「言えるよね?」











「………臨…也さ…ん」













好き…って…何…?











「ほら…」











「…っ…す…」












plll!!plll!!










「…っ!うぁあ!!」
いきなり鳴り響いた家電の着信音に思わず驚き、飛び上がってしまった。と、同時に臨也さんをはねのけてしまった。
「あたたたっ…」
「あぅ…あ…」
頭がうまく働かないし、臨也さんを心配しなければというので頭がぐちゃぐちゃになった。
「あー残念」
何言ってんだこの人。パクパクと赤くなって言葉が出ない自分を放って、臨也さんは電話に向かった。
「うん、新羅?あぁ、ちょっとね。あぁ、新羅、












次こういうタイミングで電話してきたら刺すよ」













(あの時)
(自分が何を言おうとしたのかは)
(忘れてしまった)

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