進撃の巨人連載

□6 命を託せる人
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ライナーが走り続ける間、私は彼の手の中で指の隙間から外界を伺った。

ライナーは近くの巨木林に向かっているらしい。

でもあっちには巨人が沢山いた。


「カヤ、立体起動はつかえる?」

「うん、大丈夫」

「なら、ライナーが巨人化を解いたら、ユミルと一緒に枝の上まで飛んでくれ。僕はエレンとライナーを連れて行く。」

「分かった」


あんなにいるのに、不思議と巨人に対する恐怖はなかった。

ライナーは立体起動が使えるところまで来ると私をそっと置いた。

巨人化を解くようだ。

蒸発して倒れる鎧の巨人のうなじから荒い息のライナーが出てきた。

本当に、ライナーは鎧の巨人なんだ…


「ライナーしっかり!」

「カヤ、奇行種が来てる!」

「くそ、俺が…」


ライナーは立ち上がろうとしてよろめく。

ベルもさっきの巨人化のダメージが抜けていないみたい。


「みんな下がって。私が!」


私がやるしかない!

走ってくる巨人を見つめる。

いつみても気味が悪いやつだ。

おもえば鎧の巨人とこいつらがおなじ巨人という枠組みで数えられるのもおかしな話しだ。

鎧の巨人はあんなにかっこいいのにね。

私は立体機動を使って、動けないライナーに向かっていく巨人のくるぶしを狙った。

右のくるぶしが動かなくなった巨人は横に傾く。

そこにすかさずベルが走って来てうなじをそぎ落とした。


「ベル…!」

「はぁっ、はっ…早くいくぞ!」


私は手足が蔑ろにされたユミルに駆け寄って急いで彼女を担ぎ上げた。

ユミルが細身で、かつ手足がなくて助かった。

私は次の巨人をかわして巨木の枝に飛び移った。

私は枝の上にユミルを寝かせた。

手足から蒸発を発している。

ゆっくりだがよくみていればその手足は再生されていた。

追いついたベルも、隣にエレンを寝かせる。

なんだか不思議な光景だ。


「ライナーは?」

「隣の枝に」


隣の枝を見ると、ライナーが頭を抱えて座り込んでいた。

そっちまで行こうとしたら、ベルに手を惹かれた。


「ベル?」

「覚悟はある?」


何の、とは言わない。

だけど私は分かった。


「うん。そもそももうこの命は鎧の巨人のものだから」

「鎧の巨人のもの?」

「うん。それにアニが女型になったとき、私ちょっとだけあの指輪をあげてよかったって思ったんだ。結局捕まっちゃったけれど…」

「カヤ…」


隣の枝に飛び移ってライナーに駆け寄ったら、ライナーは不審そうに私を見ていた。


「カヤ…俺を軽蔑しただろう?」

「ううん、してないよ」


頬に手を伸ばしたら、熱かった。


「つめたいなぁ、お前の手は」

「なんせ心があったかいからね。ベルもおいでよ」

「僕は…」

「ベルは親友だよ。だから一緒にいようよ」


ベルは、なんだか泣きそうな顔でこちらに飛んで来て私を見下ろした。


「前…みんなでかくれんぼしたこと、覚えているかい?」

「うん。ベルがなかなか見つからなかったのよね」

「そう。昔からそうだった。僕はでかい癖になかなか見つけてもらえないんだ。

だけどカヤはみつけてくれただろう?嬉しかったんだよ」

「いつでも見つけるよ。」

「うんっ…」


今度は反対の手でベルをよしよし。

なんか私お母さんみたいだ。


「二人とも疲れたでしょ?お昼寝しよっか」

「なにいってんだお前は」

「エレンとユミルはちゃんとみとくから、ね?ほら膝かしてあげるから。」


ここで…二人が眠らなかったら私は信用されていないことになる。

私は緊張して二人をみていた。と、ライナーが私のももに頭を乗せた。

ついでベルがちょっと恥ずかしそうに。


「二人…とも…」

「お前は信じて一緒に来てくれるんだろう?

なら俺たちもお前だけは信じるよ」


巨人だらけの巨木林の枝の上で、二人の頭を膝に乗せて、私は命を預けられたような、そんな気がした。






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