進撃の巨人連載

□3 迷子が出会うもの
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最悪だ。

最悪すぎる。

簡単に言うとまいごになった。

森で。

巨人だらけの森で。


「ら、ライナー、コニー、サシャ?」


いや、でも、叫ぶのは良くないよね?

だって巨人だらけだもの。

私はそっと木の上で身を潜めた。

大丈夫、まだ十五m級はいないから…もし十五m級の巨人がきたら…私は一巻の終わり
だ。

もうちょっと周りを見よう。

今無駄に動くとガス切れになる…まって。

ほもそも今日は悪いことばかりで、私はだいぶ長い間立体起動で巨人から逃げ回っていた。

…ガスが残り少ない。

やばいやばいやばい。

いやおちつけ私!

今ここで死ぬわけにはいかない。

とりあえず誰かが信煙弾を上げてくれるのを待つしか…

私はさっきつかいきっちゃったのだ。

本当に運がない。

本当に…


ああ、目があった。

合わせてしまった。

前方に13m級の巨人一体を確認。

この木の高さは15m。

手を伸ばせば私は簡単に捕まってしまう。

別の木に行こうにもこの辺りではこの木が一番高いし、10m級の巨人も下にうじゃうじゃだ。


「どうしよ…もう終わった…」


にんまりと意味のない笑みを浮かべた巨人。


「は…はろー…」


ゆっくり伸ばされる手。

逃げなきゃ。

でもどっちに?

四方八方巨人だらけ。

もう…。


にんまり笑ったあいつの顔は、次の瞬間ぐちゃぐちゃになって眼前から消え失せていた。

一瞬、誰かの助けが入ったのかと思ったけれどそうではないようで、でもあたりの巨人はどんどん倒れていった。

なに?どういうこと?

背後に気配を感じて、私はそっと振り向いた。


「――っよ…ろい…」


鎧の…巨人…?

なんで、こんなところにいるのだろうか。

一瞬死に直面したせいか私は常人なら悲鳴を上げてもおかしくないような状況下で、おもわず鎧の巨人を見つめていた。

鎧の巨人には瞳がないけれど、なんだか鎧もこちらを見つめているような、そんな気がした。

そしてその背後から、15メートル級の巨人が。


「後ろ!」


鎧の巨人はそこから動かずに肘を後ろに突き出して15メートル級をあっという間に吹っ飛ばしてしまった。

ああ、私鎧の巨人にくわれちゃうのかな?

鎧の巨人は他の巨人とは違うから、エレンやアニみたいに誰かが入っているだろうとハンジさんがいっていた。

だったら、私の言うことは伝わるのかな?


「食べても良いよ」


鎧の巨人はぴくりと動いた。


「死にたくないけど、どうせ食べられるならあなたがいいかな、なんて」

鎧の巨人は強いし、気持ち悪くないから。

だけど鎧の巨人は私から視線を離すと、後ろを向いてしまった。

もう、行くのかな。


「あ、ありがとう。誰にも言わないよ」


走り去っていく鎧の巨人は、いままではただ気持ちの悪い巨人の中の一種に過ぎなかったのに、すごく人間っぽく見えて、しかもちょっと格好良く見えた。

兵士がこんな事じゃいけないけれど、ようするに気まぐれだったとしたって私は絶体絶命のところを助けられたのだ。


「カヤ!」

「あ、コニー」

「サシャ、こっちにいたぞ!」


呆然と突っ立っていたらちょっとむこうからコニーの声が聞こえた。

まずいな。

ここにこられるとこの巨人の死骸みられちゃう。


「そっちいくね!」


私は慌てて木から飛び立った。


「おい大丈夫だったかー?」

「本当たすかったよー、もうガスが少なくて」

「ったく〜、心配しちゃったじゃねぇか!」

「本当ですよカヤ!あ、ライナーも来ましたよ」

「おいライナーお前までどこいってんだよ」

「す、すまん」


ねぇ、あなたはいったい何者なの?鎧の巨人さん
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