進撃の巨人連載
□2 かくれんぼ
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「なぁ、今日の午後休暇だったよな?」
朝、その日はアニの夢もなくて早い時間に食堂に来た。
そしたらそこにはライナーがいて、私が入るなりそう尋ねてきた。
「うん、そうだよ。てかライナー早いね」
「今日は食事当番だ。お前も」
「あ、わすれてた」
そういえばユミルにライナーと一緒だからって譲って貰ったんだった(交代というか単なる押しつけだったけれど、まぁいっか)。
「当番もう一人は?」
「ベルトルトだ。あまりに寝相が悪いんで、起こすのに躊躇した」
「本当は違うくせに」
「さぁ?」
本当は私と二人でやりたくて起こさなかったんだって、私は知っている。
「まぁいい、それで午後の話なんだが…」
「うん。私どっか行きたい」
「ああ。二人で出かけよう」
「でもベルおいてくのは悪いよ…」
「いいんだ。あいつが二人でゆっくりしてこいって言ったんだ」
ベル、気が利くじゃないの。
「それで、夜にかくれんぼが企画された」
「…うん?」
「なんでも一番最初に見つかったヤツが明日兵長の部屋の掃除をするらしいぞ」
「それは一大事ね」
「ああ」
ぐつぐつ煮立っていくスープ。
何気ない会話が、兵士になってからは本当に大切で。
「なぁカヤ。お前の心に開いた穴は、俺なんかにはふさげないもんなのか?」
唐突に、ライナーはそう問うた。
「…例えばさぁ、ベルがいなくなっちゃったとするじゃん?
それで私がライナーを励ますの。でもきっとライナーの気持ちは満たされない。
ふと隣を見たときに、いつも一緒にいた友達がいないのは、他のものじゃ埋まらないくらい切ないんだよ」
「…ああ、そういう奴らは何人も見てきた。兵士だからな」
「うん…」
「でも、時々自分の無力さに――なんつぅか…」
ライナーは頭をかきながら眉を寄せた。
ライナー、私がずっとこんな調子のせいで責任を感じてるのかな?
だとしたらそれはとんだ筋違いなのに。
「ライナーは無力じゃないよ。
穴はふさがらなくても、ライナーのおかげで穴は小さくなった。
私ライナーとベルがいなかったらきっと今頃…」
「カヤ」
「ん?」
「ありがとな」
「お礼言うのは私の方だよ。いつもありがとう、ライナー」
久々に二人で出かけられて、幸せだった。
いつも街に来ると指にはめられたアニとおそろいの指輪が、冷たく感ぜられる。
けれどこの日はあまりそれを感じなかった。
「その指輪…」
「ああ、うん。アニとおそろいのヤツ。
普段はお守り代わりにもってるの。
立体機動の妨げになるから、指にするのは久しぶりだな」
「じゃあ、人差し指にはアニのがあるからな。
俺からは左手のあの指に送らせてくれないか」
「っな…ライナーったら!」
何をするわけでもなく街を一日中歩いて、二人で予算内の指輪を見てきて、それを購入した。
ライナーが膝を突いて私の左手にそれをはめてくれたときは、すごくうれしかった。
帰ってくるとまたジャンにちゃかされて、けれどやっぱりここが帰る場所なんだなぁと再確認させられる。