イナイレ長編

□9 目金、立つ!後
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「このまま逃げ切るぞ!」

「まもなく〜秋葉名戸学園の勝利〜勝利〜」


クソむかつくんですけど秋葉名戸…。

未だあのよく分からないチームへの打開策もないまま、試合も残りわずかとなった。

これはある意味、いままでで最大のピンチかも。

豪炎寺が、ぐっと力を込めてズボンを握りしめた。

そうだ、こいつだって本当は出たいのにもどかしいんだ。


「時間がないよ!なんとかしなさい!」

「カヤむちゃぶりー」

「だ、だってさぁ…」

「行くしかねぇ!打って打ってうちまくってやる!ドラゴン――」

「シュートを打ってはいけません!!」


もしかしたら、こいつのこんなに大きな声は初めて聞いたかも知れない。

そんな声で、目金は叫んだ。

あまりの大声で竜吾もシュートをとまどい、それをスライディングでカットされた。

なんだ目金!


「てか目金消えた!?」

「いいえ!僕はいますよ!そして…見破ってしまいましたよ…シュートが決まらなかったわけを!」


どういう…こと…?

目金の声はあの砂埃の中から聞こえてくる。

そして砂埃が止むと、目金の言うことがはっきりと分かった。

あれは…


「ゴールをずらしていた!?」

「シュートが入らなかったわけはこれか!」

「だからあっちのGKあんなにつかれてたって事か」


なんと向こうの選手達は砂埃を起こしたあとこぞってゴールを横に動かしていたのだ!

なんていうせこい…!

ありえねぇ…ありえないありえないありえない!!


「キサマ…なぜわかったのだ!」

「仮面ソイヤー、第28話…怪人砂ゴリラの使った土煙の煙幕作戦…あれが答えだったのです!」

「うん、よくわからんけど!」

なんだ怪人砂ゴリラって!

「くそぉー!これがお前らの勝ち方かクソオタク!」

「ク、クソオタクですと!

っ…しかし僕たちはどうしても勝たなくてはならないのです!」


そういって、秋葉名戸の選手は何事も無かったかのように出てしまったボールを拾い、半田に渡した。

ゴールずらすなんて…プロだったら反則ものだぞ。


「僕にボールをください!」


しかし原因が分かったところでどこにずらされるのか分からないのではやりようがない。

そこへ、目金が再び声を上げた。

半田は「えぇ!?」と声を上げた。

その気持ちもよく分かる。

目金はもうほぼマネージャーみたいな存在だったし、なによりあの帝国戦で逃げ出したヤツだから。

けど…今の目金は違うみたい。

だって、あいつの目を見たら分かった。

あいつは今必死になってるって事に。

半田もそれに気が付いたらしく、目金にむかってボールを投げた。


「正々堂々悪に挑む、それがヒーローでしょう!

相手をあざむくなど、ヒーローのやることではありません!」


目金…


「僕は…僕は悲しい!あなた達のマンガに、僕は幾度となく勇気を貰いました。

なのに、作者のあなた方がこんな卑怯なことをする連中だったとは…シルキーナナにあやまりなさい!」

え、シルキーナナって何!?

てかなにあのドリブル!目金あいつ今極限状態だ!

「変身中や説教中に攻撃を仕掛けるなど、ロボットマニア失格です!」

そして、目金の説教を聞いた選手達は次々倒れていく。

「みんな!五里霧中だ!」

「まだそんなことをするのですか!」

「これが、オタクの必殺技だ!」


「あなたたちなどオタクではありません!

オタクとは、一つの世界を真摯にまっすぐに鍛えた者!

ゲームのルールを破ってまで勝とうとするあなたたちに、オタクの資格などありませぇん!!」


目金の言葉にDFの四人は完全に固まった。そして最後のGKがゴールずらしにかかる。


「染岡君ドラゴンクラッシュです!僕に考えがあります!」

ここまでボールを運んできた目金がそういうなら…なにか秘策があるのかも。

あたしなんかには思いつかないような何かが。

「竜吾ー!」

「ああ!行くぜ!ドラゴンクラッシュ!!」

「ゴールずらし!」


目金が走っていく。

そして…そし…て…


「うう!」


目金は、ドラゴンクラッシュに飛び込んでいった。


「目金ーー!!」


ボールは軌道を変えて、ゴールした。

「これぞ…メガネクラッシュ――」

「目金!」


ああ、いやなシーンが頭をよぎっていった!

この前話したばかりなのになにしてくれんのあいつは…!

担架を引きずって駆け寄っていくと目金のメガネは欠けてしまっていた。

でもよかった。衝撃でくらくらしてるだけみたいで…本当に…


「馬鹿目金!あたしが兄ちゃんの話したこと忘れたわけ!?

超次元技を頭でうけるなんて…しかも竜吾が犯罪者になっちゃうじゃない!」


担架で運ばれていく目金について行きながら怒鳴ると、目金はふふっと小さく笑った。

「僕が染岡君のシュートで死ぬはずがないですよ。お兄さんの話はプロでの話ですし…」

「それでもだよ馬鹿!あんたみたいな馬鹿を心配しちゃったじゃない!」

「そこでまで心配してもらえるだなんて、僕は幸せ者ですね」

「ふざけんなこの――」

「どうしてだ」

あん?

「どうしてそんな姿になってまで君は…」


その驚きを含む声に振り向くと、秋葉名戸の選手達がこぞってたっていた。


「目を覚ましてほしかったのですよ、同じオタクとして」

「目金君…君の言葉で分かったよ。もう卑怯なことはやめるよ」

「われわれも全力を尽くして、雷門中にいどうもうではないか」


目金があまりにうれしそうに笑ったので、あたしはもうどなってやる気分にはなれなかった。

そしてベンチに戻って、のこり数分の試合を見ていると、その数分間の秋葉名戸の選手達は本当に楽しそうに、そして必死に戦っていた。

やっぱりサッカーはこうじゃないと。


「なぁ目金」

「なんでしょう」

「いままであんたのことクズみたいだと思ってた、悪かったな」

「く、クズ…!?」

「っはは、まぁそれは言い過ぎだけど。

あんたがいなきゃ、あたし達ここで終わりだったもん。

まぁ感謝してるから」

「当然です」


くそこいつ、調子乗りやがってこの野郎。

試合はこちらの優勢ですすみ、竜吾のゴールで試合は終わった。

目金は試合あと秋葉名戸の選手達と妙になじんでいた。

この試合のおかげで、あたしをふくめ、みんなが目金のことを見直した。

それにしてもあいつなかなか良いこと言ったな。

オタクとは一つの世界を真摯にまっすぐ鍛えた者、だっけ。

じゃあみんなもサッカーオタクというわけだな。


「僕がフットボールフロンティアで優勝した暁には、フィギュアを買ってくると誓いましょう!」

「気が早いわぼけ!」

「ああ!僕のメガネが――!」


次はどんな相手が待っているんだろう。

なんだかわくわくしてくた。


メガネに映った空は、青く輝いていた。





後書き
どんなにしっちゃかめっちゃかになっても、最後は綺麗にまとめられるのが自分のスキルだと思いました。
…いらねー!もっとうまくかきてぇー!

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