イナイレ長編
□8 恐怖のサッカーサイボーグ!上
1ページ/1ページ
御影専農中の校舎はへんな空気だった。
意味の分からない電波塔とかあるし、なんだか全体的に堅い感じだ。
まぁ前回が野生中だったせいもあると思うけど…
そして今日、あたしははじめてのベンチ入りを果たした。
その最初のベンチで冬海先生が、結局新必殺技は無いんですねとかいうからむかついたけれど。
「この前の勝負は俺たちの負けだった。でも試合はチーム同士の戦いだ。
必ずチャンスはある。ガンガンせめていこうぜ!」
「おー!!」
ホイッスルの音で試合が開始された。
まずは相手の様子を探るために竜吾と豪炎寺がまっさきに上がっていく。
なのに、どういう事だろう。
御影専農の選手は竜吾達に抜かれてもそこから動かないのだ。
なにふざけてるんだあいつらは。
そう思ったけれど、どうやら向こうは動かない方向でこちらの様子をうかがっているようだ。
GKの杉森がなにか大声で指示を出すと綺麗にフォーメーションをくみだした。
そしてドラゴンクラッシュも簡単に止められてしまった。
相手はやはりこちらの事は全て把握しているようで動きも完全に読まれている。
でも、お前らが最後に取ったデータは何日前の?
こういう相手に通用するのはやはり「予測不能の動き」に違いない。
「練習の成果をみせてやんなさい!ガンガンいくわよー!」
「よし、行くぞ!ファイアトルネード!」
相変わらずのパワーで打たれたファイアトルネードは杉森に止められてしまった。
だけど私は見逃さなかった。
杉森の顔に驚きの表情が現れたことを。ボールを手の中に納められなかったことを。
そしてそのあとのドラゴントルネード、イナズマ落としの連続攻撃はやはり止められたが杉森に一段階上のセーブ技を出させることが出来た。
だけど前半も半分が終わる頃、左右からのゆさぶりで攻撃に追いつけない円堂を、ボールは超えていった。
「くそっ、やられたな…」
しかも相手はこれからこっちが攻めていこうと言うときに引いて守りに徹してきた。なんて奴らだ。
一点取ったら跡は自陣に引くだなんて。とは言っても奴らのテクニックはなかなかのもので、ボールを奪えないままに前半は終わってしまった。
あーイライラする。
いらつきながら地団駄を踏むような足取りで控え室に向かうと向かい側からやってきた御影専農の選手達と目があった。
くぅ〜はらたつっ!
「おい杉森!なんで攻撃しない――」
「おい剛このやろうめ!」
「カヤ!?」
「後半ぶっ飛ばしてやるから、そのアホみたいなサッカー、いやあれはもうサッカーとは言えないな!アホみたいな動きをやめやがれ!」
杉森の、機会みたいな目がじろりとあたしを睨んだ。
「監督命令はリスクをおかさず勝つこと。何点差であろうが勝ちは勝ちだ」
「はぁん。あたしには一点差で安心しているあんたらはだいぶ脆いとおもうけど!」
「データにないことは、起こりえない」
「じゃああたしが、それをおこす!
データにあたしの情報がはいってなくて残念だったな。これから楽しいことおこしてみせっからな」
「楽しい…?」
「そうだ!カヤの言うとおり、サッカーは楽しいものなんだ!」
「――理解不能だ」
「言ってろ言ってろ。この石頭野郎。いこう守」
<さぁ、後半がまもなく始まります!雷門中は少林寺に変えて紺野カヤが今大会初出場を果たしました!>
久々にグラウンドの前に立ってちょっとだけ緊張する。
でも緊張で固まるわけにはいかない。
あたしはこの試合でのキーマンなんだから。
だけど、私は分かっていなかった。
自分の中に深く刻み込まれたこの傷は、そう簡単に消えたワケじゃなかったんだということに。
・