イナイレ長編
□7 河川敷の決闘!上
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「ち〜れ〜!他校の生徒が来る場所じゃっ、ねぇっつうのー!!」
うん、久々だ。
こんなにがつっとボール蹴り込んだの。
あと初めて見た。グラウンドに車がつっこむところ。
野生中との試合で勝利した私たち雷門イレブンも、昨日しっかり休養をとり今日からまた本格的な練習が始まった。
私は嫌な予感がするからちょっとだけ練習に遅れてきてみたのだけれど…まぁ、予想通りね。
河川敷の上を通過する橋の上には他校の生徒がたくさんいた。
ビデオカメラなんかを持っているところを見ると偵察隊のようだ。
まったく面倒なことになったなぁ。
あたしがけり込んだボールに驚いて何人かは散ったけれど、まだ諦めずにカメラを構える人がいる。
まじめんど。
そして夏未の車がゴール前につっこんでいったことでみんなの練習は中断された。
「必殺技の練習は、禁止します」
「いきなり何を言い出すんだよ!必殺技なしで、フットボールフロンティアを勝ち抜けるのかよ!」
「バカ守ー!橋の上見てみなさいよ!」
土手を下りていって、いきなりの必殺技禁止令に守が非難の声を上げるので私は言ってやった。
「あ、カヤ!お前からも言ってくれよ!」
「あたしからも言うけれど、必殺技は禁止!」
「えー!お前まで!」
「俺もだ円堂。あれはファンなんかじゃない。中学の偵察隊だ」
「そだよ。豪炎寺の言うとおり。ライバルにこっちの手の内みせちゃっていいわけ?」
「て、偵察〜〜〜!?!?」
豪炎寺からの指摘に、みんなが素っ頓狂な声を上げた。
「そういうことで、必殺技の練習は禁止します」
夏未が繰り返していった。
豪炎寺は仕方ないと言いたげにため息をつく。
でも守はまだ諦められないみたいで「だったら!」と声を上げた。
「誰にも見られない練習場で練習をしよう!」
「それが無いから禁止してるんじゃないの」
「でもさぁ、必要だろ?」
「そうだけど…とりあえずあたしも何か考えるから今日のところは必殺技はなしで行こう」
***
久しぶりに走り込みとか、必殺技で体力を使わないぶん頑張ってみたらそれなりに疲れてしまった。
私は部活が終わった後、ひとり鉄塔広場で必殺技の特訓をした。
部活終わった後で一人なら、見られてることもないと思ったし。
けどやっぱ、グラウンドじゃなきゃうまく練習も出来ないなぁ。
結局満足ならないまま日は落ちて、暗くなってしまった。
するとあたしは前方に、なんと帝国の鬼道をみつけた。
ちょっとびっくりしてみてみると、ヤツは次の相手である御影専農中学の制服を着た奴らとなにやら話していた。
そ〜っと近づくと、なんだかいただけない言葉が聞こえてきた。
「そうだ、GKの円堂守…それと、帝国戦ただ一度だけFWとして出場した紺野カヤ。あいつらは、とびっきりの大バカだ」
え、なにそれ。
「それ陰湿な悪口といういじめなの?」
「っ!?」
あ、びっくりしてる鬼道。
「おっす鬼道。元気か!」
「…紺野カヤ」
「あんだよいつまでフルネームで呼んでるわけ?カヤってよんで良いわよ」
「あいかわらずの上から目線だな…」
別にそんなつもりはないけれど。
そういえば誰と話していたのかな、と鬼道から視線を外すと、あたしはすごい頭をしている男子と目があった。
さすが鬼道の友達もなかなかすごいヘアスタイルだな。
「…お前が紺野か」
「おう?そうだけどあんたは?」
「……」
ちょっと、無視ですかコノヤロー。すごいヘアスタイルの男子はもう一人を引き連れると、さっさといってしまった。
なんだ、嫌な感じ。
「ふっ、では俺も行くとするかな」
「えー、いっちゃうの?有ちゃん」
「…なんだその呼び方は」
「下の名前有人なんでしょ?じゃあいいじゃない」
「良くない」
「じゃ、またね有ちゃん!」
「あ、おい!…なんてヤツだ紺野カヤ…」
***
翌日の練習も、懲りない偵察隊は減るどころかその数を増していた。
しかも飛鳥の声で橋を見てみればでーっかいアンテナをもつトラックまできやがった。しかもそこに乗っていたのは昨晩顔を合わせた御影専農の二人だった。
春奈からの情報によるとGK杉森威とエースストライカーの下鶴改だと言うことが分かった。
くっそ、あいつなんかむかつくから「たけちゃん」と「しもちゃん」って呼んでやろ。
「しっかし嫌な連中だぜ」
「そういうなよ竜吾…。ほらみんな!たけちゃんとしもちゃんの事はとりあえずおいといて、練習するよ!」
「カヤお前なぁ…」
「あ、カヤさんお電話なってますよー」
「お、さんきゅー!じゃみんながんばっててね」
「おい紺野練習中だぞ」
「ごめん風丸。でもあの着信音はお嬢様からなのでご勘弁〜」
「…まったく、しかたがないでヤンス…」
***
「な、なにやってんのあんたらー!」
電話から帰ってきたあたしは、目の前の光景に目を見張った。
なんとグラウンドに杉森達が入ってきていて、みんなと敵対するように立っていたからだ。
「証明はおわった…」
杉森は、そういってボールをその場に落とし、グラウンドに背を向けた。
どういうことだ?
グラウンドを出る杉森と、目があった。
「お前の能力が帝国戦の時よりもパワーアップしたと仮定して考えても、勝ち目はない」
「あ?なんだよ急に」
「……」
「おい!杉森!…たけちゃん!」
おもいきって言ってみたら、杉森はぴくりと動作を止めて、振り向いてあたしを睨んで行ってしまった。
あたしも杉森の後ろ姿をにらみつけて、奴らが帰ったのを見届けてからみんなに視線を向けた。
「…で、なにしてたのみんな」
「…勝負をしたんだ。一対一の」
「っばーか今のあたしたちが一対一じゃ負けるにきまってんじゃん!」
「そんなのやってみなくちゃわからない!」
「でも負けたんだろ?」
残酷だけど、そういえば守はうつむいてしまった。
「…俺たちのことを、害虫だって言われて、カヤは黙っていられるかよ!」
「っが、いちゅう…」
はぁ?なにそれ…なにいってくれてんのあのツンツンはげ頭が…
「――ぶっ殺す」
「わぁああ!頼むからお前だけは冷静でいてくれよ!」
飛鳥に後ろからおさえつけられながら、あたしは足をばたばたしてあばれた。
ちくしょう覚えていやがれ!